第28話 帰宅

 俺達は追加で一泊し、一度村へ戻る。

 レオは領主との話などがまだあるから残るという事で、リュウが作ってくれた通信の道具を置いていく事にした。

 これがあれば帰りもすぐ迎えにいけるだろう。


 結局あっという間の三日間だった。

 俺にとってもとても有意義な時間だったと思う。

 人の為に何かをしたいという気持ちが明確になったのも大きい。

 あの街を無くさないためにも、俺達が出来る事をしていこう。


 帰りはある程度の人里から離れた場所まで移動してからジェットの魔法を使う。

 デサリアから国境側への移動がほぼ無い事がわかったのと、一度街に接触出来た事もあり森に入る前から使うことにした。


 魔法というのは本当に便利だ。

 前の世界でも科学によって移動はどんどん快適になっていたが、使えるようにしてくれた神様に感謝だな。

 俺達は正午を回る頃に村に着く。


「おーいただいまー! ってなんだこりゃ!?」

 俺達は村に到着したが、見慣れない建物に驚く。


「おかえりー!」

 リュウが外で作業していたようで、出迎えてくれた。


「ただいま、この数日でつくったのかこれ?」

 簡易的な屋根がつけられた場所に囲いが付けられた穴があり、その中には水が湧き出している。

 井戸が出来ていた。


「ココと村の人に穴を掘ってもらって、俺は建物作ったよ!」

 すごいな、流石俺の家族だ!

 頭をわしゃわしゃ撫でながらも、水がどこから来てるのか気になった。


「前から集めてた魔石を使って、水が出るようにしたんだ! これで村人の水問題は解決だね!」

 元々家の水道から分けていた水だったが、これで皆が気兼ねなく使えるだろう。

 それに魔法を早速使いこなしてるのは俺だけじゃなかった。

 リュウは魔石を使い更なる制作を出来るようになったし、俺も負けられないな。


 着いてまず行ったのは村人への報告だ。

 家族が徴兵されている人々には、守りを固めている為まず危ない目には合っていないだろうという事と、これ以上戦争が続かないよう森を広げる話をする。

 驚く人も居たが、大半は安心した表情を浮かべている。


 森を広げるという事で農業を生業とした人間を手伝いとしてリストアップしてもらう。

 木の種子を集め撒いていき、成長を促進してどんどん広げていくという概要は頭にあるが、実際に魔法で作物を育てている経験者が居た方がトラブルの対処も出来るだろう。


 本格的に行動するのはレオが話をつけてから。

 俺達が今できるのは種子集めと役に立つ魔法を皆に教えて貰う事。

 ハクの事や村人の家族と再会させてあげたい気持ちは強いが、今は耐えてもらう。

 戦争の危機が減り、俺達が王国と対等に話せる立場を作ったら、必ず会わせてあげたいと思う。


 それと森を広げる上でまだ街より国境側にある村の人々には、うちに受け入れたいと思っている。

 これも決まり次第レオや村人に協力してもらいながら進めていきたい。


 ということで俺たちの村の今後の目標は、人の受け入れの為に村の拡張をすること。

 村としてはやる事は沢山あるが、皆で協力してこなしていこう。


 報告と方針を決めた俺は一休みするために家に戻る。

 やっぱり家は良い、落ち着く。

 ふう、と一息つくと、ココがお茶を出してくれた。


「ありがとう、珍しいな」

 ココが優しいのは知っているが、お茶を淹れられるとは思っていなかった。


「まあ見様見真似だ。お疲れ様」

 少し照れた様子でそういうココは、頼れるお兄さんだな。

 うん、うまい。

 今日も皆と家で過ごせることに感謝の気持ちで一杯だ。


「なんで連絡くれなかったんだよー」

 せっかく作った道具で連絡をくれなかったといじけるリュウも可愛いな。


「あの道具のお陰でレオと離れてても連絡が取れる。安心して戻って来れたよ、ありがとうな」

 数日会わなかった反動かいつもの三割増しで撫でまわすと、流石のリュウも「やめろよー!」と困惑気味だ。


 数日振りの家族全員での食卓も、賑やかに過ぎていく。

 改めて皆に報告をして、打ち合わせをする。


「本当にそんなことができるのかよ」

 ココがやはり驚いてハクに質問する。


「出来るよ、皆魔力沢山あるから一杯生えるよ!」

 言葉ではそういうがやってみなければココも納得出来ないだろう。

 それでも俺はハクの言う事を信じている。

 一番皆が幸せに済む方法だ。

 それにハクがわざわざ嘘を言うとは思えない。

 俺達の力の限界がまだまだ見えないからこそ、出来る限り試していきたい。


 明日からの大仕事に向けて今日はゆっくり休もう。

 沢山の幸せを噛み締めながら。

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