第19話 まほうのおべんきょう
会議の後の動きは皆迅速だった。
ココとルビーは探索を続け、相変わらず村の台所事情を支えてくれている。
中には希少な素材も取ってきてくれるため、村人がちょくちょく驚いたリアクションを取ってくれるのが新鮮で面白い。
レオは問題なく帯同しているようだ。探索中にココとルビーは教えを乞い、更に戦闘力に磨きがかかっている。
俺も時々参加させてもらっているが、やはり魔物程度では傷一つ負わず対処出来た。
初めはどちらかというと悲惨な光景に精神的にやられていたが、これも生きていくため、慣れた頃には感謝しつつ倒せるようになっていた。
村の方はというと、俺たちが拓いた土地では足りないほどの発展を遂げていた。
村人達は総出で開拓に勤しむ。女性や子供達も村の時と同じ生活が出来ると喜んでいた。
リュウには建築と農地開拓の総責任者になってもらっている。
見た目はまだ小さな男の子なのだが、物作りに関しては村一番なのだ。
建築作業は力がいる為エドを中心に大人が集まって作業をする。
重労働はリュウ、トラ、俺も参加し、細かな作業は村人が担当。
素材はすぐに用意できるし、一番人手がいる作業を俺たちは一人でこなせるのだから住人の家は1か月も掛からず用意が出来た。
村人達も大変な経験をしてきたのだからなのか、教えるとすぐに吸収しこなしていく。
普通の人ならすぐにへばるであろう建築作業を楽しそうにする姿を見ると、いかに元の世界は便利な世界だったのか痛感する。
それでも自分達が生きていくために準備し作り上げていく作業は、それだけで活力となりやる気が漲る。
生きている実感を全身で感じつつ作業を続けた。
農地の指揮はマーズが中心となっている。
どの作物を植えるか、まずはその苗床の確保をしないといけなかったのだが、この森は自然の宝石箱だった。
普段から親しまれている作物から、珍しく手に入れるのが難しい薬草や果物まである。
それが生えている森に畑を作るのだから、土壌や環境も問題は無い。
ココ達探索組が入手できると分かってからマーズはますますやる気を出して作業を続ける。
俺たちが広げた土地の北に農地を作る事になったのだが、マーズは商魂? 逞しく想像の倍以上の範囲の土地を必要とした。
開拓するだけなら元々俺とリュウでやってたくらいだ、人が増えた今なら楽に行えるだろう。
魔物避けの柵を俺とリュウが設置し、予定していた土地の開拓を進める。
「なあマーズ。こんだけの土地を畑にするのは良いんだが、人手が足りるのか?」
少し無理をし過ぎてはいないかと心配していたのだが、マーズは逆に疑問を投げかける。
「これくらいの土地なら人手は足りてるわよ? うちの村には元々農業をやってた人が多いし、適した魔法を使える人間なら十分居るわ。それに一番の問題だった防衛だって魔物避けの柵でまず魔物が来ないし、そこが解決すれば問題なくてよ」
俺は失念していた。ここは異世界、魔法が存在しているのだ。
正確に把握したのはこの村に人が来て生活を始めてからなのだが、この世界には沢山の魔法があった。
良くイメージする戦闘用の魔法の他に、農業や建築などの作業魔法、生活魔法など多種多様に存在する。
建築に関してはそれを使える人が居なかったが、農業に関しては本業にしていた人が多かった。
中身を聞いてみると、土を耕す
中には虫よけの
何とこの魔法、多様過ぎる程存在する為子供でも使えてしまうらしい。恐ろしき異世界。
ということで俺たちの最優先課題が変更となる。
魔法の習得だ。
加護の力で乗り越えて来た俺たちだが、魔法に関しては知識が無い。
子供でも知っている知識は、この世界では赤子の俺たち家族には未知なる部分だ。
ココとルビーはレオと探索している最中に様々な攻撃魔法を教わる事となった。
俺も参加している時は直接師事してもらい、リュウとココには改めて教える。
リュウとココには俺と共に村人が使う、生活や様々な作業で使う魔法を教えて貰う事になった。
物語の中にしか存在しなかった魔法を自分たちが使えるという事実に俺は胸を膨らませていた。
授業はハンナが行ってくれる。
俺とトラとリュウは教え子だ、一緒に子供達も参加している。
「それじゃ皆、簡単な魔法から教えるね」
ハンナは初歩中の初歩、《ウォーター》を説明をする。
「そんなのみんなしってるよー!」「これでしょー!」
子供たちがブーイングと共に実践してみせる。
おお、何もない所から水が湧き出す。
この
生活に無くてはならない魔法で、尚且つ魔力消費もほぼ必要が無いために子供が最初に覚える魔法の様だ。
なんだか恥ずかしさと申し訳なさを感じる俺たち三人を見たハンナは「静かに!」と一喝。
あまりにも大きな声だった為に子供たちは一斉に静まる。
ハンナは見た目以上に勝気なようだ。俺たちも怒らせない様に真面目に授業を受けよう。
俺にとって娯楽のような、この世界での楽しみを見つけた瞬間だった。
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