第18話 第一回村会議

 無事村人が到着し、宴が終わった次の日。

 俺はレオに村の代表者を数人選んでもらうことにした。


 今後の方針は俺たち家族だけで決めるのは難しい。

 レオ一人に負担を掛けるのも申し訳ないし、何よりここで暮らしていくには協力が必要だ。

 村人たちがどうしていきたいかの意見も聞きたいし、先に話し合いをして意見交換しておきたい。



「それではこれより、第一回村会議を始めたいと思います。私ルビーが進行役を務めさせて頂きます」

 何故か進行役として買って出たルビーが話を進める。


 見た目はかっこいい大人のお姉さんのルビー、スーツでも来ていればバリバリのキャリアウーマンのようだ。


「俺はハルキだ、よろしく」「リュウだよ!」「トラです」「ココだ」「キュー」

 皆が順番に自己紹介をしていく。


 ハクは喋れないのだからここに参加しても余り意味が無い様に見えるが、村人達としては村のシンボルとして存在する為聖竜様の御意向も聞きたい! という事だ。

 その内この村の村長にでもなりそうだなハクは。


 こちらの挨拶を済ませると、レオが立ち上がる。


「改めて、レオだ。一応家名もあるのだが、国を捨てた身、レオと呼んでくれ」

 やはり王国の重要人物だったのであろうレオが挨拶をすると、村人たちの代表者が挨拶してくれた。


「ハンナです、よろしくお願いします」「エドじゃ、よろしく頼む」「マーズよ、よろしく」

 この3人が代表者に選ばれたようだ。


「エドは集落最年長の爺さんだ。といってもまだまだ体を動かすには十分な歳なんだがな。少ない男手として代表者になってもらった」

 エドは見た目はまだ50代くらいなのだが爺さん呼ばわりされている。この世界は寿命が短いのかと思ったが、聞いたところ初老は超えているらしい。

 年齢的に徴兵は免れたが言葉通りまだまだ一線で働いて貰えそうだ。


「マーズは村の仕事を指揮してもらう。元は大手商会の娘だったのだが、こちらに嫁いで来ていたのだ。村の経理として働いていたし、多少の無茶もマーズがいればなんとか熟せるだろう」

 マーズは28歳で、商業も学んだお嬢様だそうだ。今後どこかと交易などはまだ考えてもいないが、俺たちがいなくても村を回せるというのは大きいだろう。

 勉学が出来るのであれば、子供たちに教えるという事も出来るだろうし。


「最後にハンナ。まだ18歳と若いが、子供達の世話に避難先での生活でも働き者だった、村人からの信頼も特に厚い」

 ハンナは俺とココが初めて接触した村人だった。

 下手に騒がずレオに取り次いでくれたし、度胸もあるのかもしれない。

 レオは最初から臨戦態勢だったけどな。


「では挨拶が済んだ所で会議を進めさせてもらいます。今日の議題は今後の村の方針と食料についてです」

 ルビーは淡々と議題を進める。妙に板についているなと思っていたが、前の世界でドラマなどを見ている時はジッと見入ってた気がする。

 あの時は「好きなのか?」なんて茶化していたが、本当に動物が理解し楽しんでたのかと思うと面白い。


 関係の無い事を考えていると最初の話し合いが既に行われている。

 当面の食料についてだ。


 肉などの食材や野草など、量については俺たちが今まで探索して手に入れている量があれば問題が無かった。

 だがそれではいつまで経っても村人達は頼りきりの生活になる。

 しばらくはこの生活が続くだろうが、前の村で行っていた農業を精力的に行っていきたいようだ。


 俺たちも大いに賛同した。

 農業が上手く行けば安定した食料を得られるし、村人たちの自尊心も高められるだろう。

 やはり人に頼りきりの生活になると人は捨てられないか不安になるものだ。

 俺はあくまで対等な生活を望んでるし、村人達の生活を背負い続けるのは荷が重い。

 責任は持つが、村人たちが自分の足で再起したいという意見にはとても安心した。


 次に俺たちからの意見を述べる。

 今は村人たちは一つの家に住まわせているが、個人の家を持たせたいと思っている。

 集団生活というのは気を抜けないものだ、早くプライベートの時間を作って休ませてあげたい。


 これに関しては後回しでもいいという意見があったが、俺たちがいた世界でも災害などで避難生活を行うことが幾度かある。

 あの空間でずっと暮らしていると、体力的にはまだしも精神的に疲労するものだ。

 精神的に疲労することが生活にどう影響をするか、俺は人一倍知っているつもりだ。

 この件に関しては押し通させてもらう。


 村人達には何家族いて何件必要かをきちんと出してもらい、その分の家をきっちり建てていく。

 中には家族同然の仲になった者達もいるだろう、把握はしっかりと頼むと伝えた。


 村の開拓は農地を拡大しつつ住居を作るというのが当面の目標となった。

 作物の保管場所も追々必要になるだろうし、建築ということでリュウには負担をかけてしまうな。


「まっかせておいて!」

 と胸をドンと叩くリュウは逞しく、微笑ましかった。


 周辺の探索はココとルビーが中心となり、レオも参加することになった。

 この森で村人を守る事が出来たレオだ、戦力としても十分数えられる。

 俺もちょくちょく参加させてもらい、経験を積んでいきたい。


「それともう一ついいか?」

 俺はこの会議で一番伝えたかった事を話す。


 昨夜レオと話をして俺の中で決めた事だったが、今後も避難民や助けを求める者達を受け入れていきたい。

 その為に争いに巻き込まれる事も出てくるだろう。

 だから村人達を無視して決める訳にはいかない。

 もう俺たちだけの場所じゃないからな。


「それは良い事ですね」

 誰よりも早くハンナが答える。

 それに続いて皆も同意してくれた。


 自分達と同じような者を助ける事に賛成した者、今後村を栄えさせるために人員を集める事を良しとした者、俺が決めた事ならという者、様々な意見があったが賛同してくれた。


「それでは第一回村会議を終了させていただきます、お疲れ様でした」

 ルビーが〆て無事終わった。

 今後は更に忙しくなるぞ。

 俺は気合を入れなおして席を立った。

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