第15話 三大国家と守護竜

「まず手始めに国について教えよう。」

 というとレオは丁寧に説明してくれた。


 この国は大きく3つの国に別れている。


 1番大きいのはバグリム帝国。圧倒的な領土と人口を誇り、大きな力を誇っている。


 2番目はトムラット王国、レオ達が住んでいた国である。領土的には丁度世界の3分の1ほどで、豊かな土地が多く第一産業が盛んだ。だが今は戦争中で、圧倒的な帝国の侵略に手を焼き国力も低下している。


 残りの1つはワイルズ連邦。元々は小さな国々が、この二大国家に対抗するために作り上げられた。

 領土も一番少なく、人民や資源などもそこまで豊かではないが、土地がとにかく複雑で危険な場所も多い。


 普段は関わり合いが少ないが戦争となると一致団結し最大限土地を生かした防衛を得意としている為、他の国と対等に渡り合えている。



 この三大国家を含む世界を守護する竜として、聖竜が存在した。

 聖竜は世界を守るが、極端に世界が崩れる時以外は介入などは一切せず、人々の大半が目にすることもない。

 だが世界に厄災が起こったり、極端にバランスが崩れる時には必ずそれを保つ役割をしていた。

 世界的には神か、神の使いとして扱われる高貴な存在だった。


 だがその聖竜が住むとされる聖地を侵略する者達がいた。帝国だ。

 かつて封印されていた古代の禁忌技術を手に入れた帝国がその力と大勢の軍勢を犠牲に聖竜を討伐してしまったのだ。

 その時の戦いで帝国の国力は半減し、回復にも相当な時間が掛かるだろう。


 だが元々帝国は強大過ぎる国力を持っていた。

 その暴走を止められていたのは聖竜の存在が大きかった。

 流石の帝国も世界+聖竜を相手には滅亡を覚悟しなければならないだろう。

 だがそこに未知なる技術が加わり、大きな犠牲はあったものの保たれていたバランスが崩れてしまったのだ。


 帝国は残る戦力でさえ王国を勝る量を誇る。

 更に国力を回復していけば、誰にも止められることは出来なくなるだろう。という事だった。



 ハクの凄さを知れたのと同時に、割と世界は危機に瀕していた。

 帝国の話を聞くと占領した領地や領民達には容赦がないという。

 恐らく帝国の民以外には人権さえないだろう。

 帝国の中でさえ格差が広がりすぎて、下の者達は悲惨な有様らしい。


「うん、ありがとう」

 少し歯痒そうに悔しがるレオに、これ以上語らせるのは酷だ。


「レオはそんな状況でなぜ王国を抜けて来たんだ?」

 それだけは聞きたかった。自分が住んでいた国であろう王国の危機に取るには不思議でしょうがなかった。


「王国は国力では勝てないからな、どうしても戦力を固めるという意見が強かったんだ。つまりは都市部に兵を固めるということになる」


「それだと他の町や村が」


「そうさ、見捨てられたのさ。権力を持つ奴らは自分たちの身を優先し、事もあろうが民を見捨てる選択肢を取った。ここに居る住民たちの夫や息子たちも皆その為に連れてかれていたのさ」

 どうやらこの国の人族も大抵胸糞悪い連中ばかりなようだ。

 聞いてるだけでも苛立ちが漏れ出る程、俺は怒っていた。


「儂もハルキ、お主と同じ気持ちだ。だから儂は自分で守れるだけの民を守る事を選んだ。結果ハルキに頼らざるを得ないのは、情けない話だがな」


「そんなことないさ、レオ。今ここに居る人たちが生きているのは、間違いなくレオが居たからなんだからさ」


「そうか、そう言ってくれるか……」

 レオ自身力の及ばなさに歯がゆさを抱えているのだろう。

 俯くとしばらく黙ってしまった。


 状況はあまり良くないな。

 かといって俺や家族をその争いに巻き込むつもりもない。

 薄情だと思われても、俺はそこまで全てを守れる勇者なんかじゃない。

 でもそれでも手を差し伸べて助けられる物があるなら、少しくらいは手助けしたい。


 重い雰囲気に包まれたまま、時間が過ぎていった。




 日が高くなった頃に、ココとルビーは帰ってきていた。

 リュウは早くも村の子供たちと打ち解けているようだ。

「村がこんなにも明るいのは久々ね」と、カレンと名乗る女性が言っていた。


 カレンは最初に村に来た時にレオを呼んできてくれた、この村の最初の接触者だ。

 あの時のお礼を出来ていなかったため、改めて感謝を伝えると「返せない恩を貰っているのはこちらなのだから」などと逆にお礼を言われてしまった。


 早速ココとルビー、リュウとレオを呼び、俺たちの家までの道のりを相談をする。


 ルビーは基本的に自由に索敵してもらう。

 全方位の注意が必要だがある程度の距離なら掴めるから大丈夫と言われた。

 明確な距離を言っていなかったが、一人で十分だというのだから嘘ではないだろう。


 俺とココは先頭を歩く。レオとリュウは後方や側面を見てもらうことにしたが、一番の目的は村人のケアだ。

 レオという精神的支柱と、既に打ち解けているリュウが村人の中心に居る方が皆安心するだろうということで、方針が決定した。


 「日程は1泊2日の予定だが、油断せずに行こう。」

 俺は皆にそう伝え、出発の準備を整える。

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