第14話 初めての入植者
迎えに行く約束をした日の朝を迎える。
俺たちは迎える為の準備を出来る限り行った。
それでも完ぺきではないが、これから少しずついい村にしていこう。
最初は家族たちだけで始まった場所に人が増える。
俺も少しずつ打ち解けていけたらな。
「よし、じゃあいくか!」
俺は一緒に迎えに行くココ、ルビー、リュウに向かって声を掛ける。
今回は村人の護衛もある。
前回一緒に行ったココに加えて、索敵に長けたルビーも連れていく。
リュウを連れて行く理由だが、集落には女性や子供が多い。
見ず知らずの大人だけで行くより、子供の姿をしたリュウも一緒に居た方が安心感を与えられるだろう、という目論見だ。
最初はトラもと思っていたが、「せっかくだからご馳走作って待ってるわ」と、歓迎の準備をしてくれることになった。
俺たちは並外れた力を貰っているので、トラ一人置いていっても大丈夫だろうが、それでも一人で待っててもらうのは不安だった。
家族からは相変わらず心配し過ぎだと笑われたが、何があるかわからないから心配になる事は当たり前だろう。
トラは歓迎の準備と拠点の防衛ということで残ってもらい、俺たちは向かうことにした。
一度行った道だという事もあり、前回よりも早く到着出来そうだ。
いつもココと探索しているルビーはともかく、リュウもしっかり付いてこれている。
さすがの加護、といったところか。
まだ日が明けて間もない頃に集落に到着した俺たちは、レオを呼んでもらう。
「ハルキ、こんな時間に到着したのか、すまないな」
移動の事も考えてだが、早く着きすぎたか?と思っていた俺たちに申し訳なさそうにするレオ。
話を進めていく内に自分たちの常識外れだということを思い出す。
俺たちの家は集落から50キロ程離れた場所にある。
ここに到着するには村人だと1日位野営が必要だろう。
戦闘も出来るだろう俺たちは、それでも半日は必要な距離だ。と、レオは考えていた。
朝起きてしっかり飯食って少し出掛けてくるって感覚で来てた俺たちがおかしいのだ。
こちらの話をすると流石のレオも驚愕していた。
「そんな事より、ココ。ルビーを連れて一度家に戻ってくれないか」
俺は急用をココに頼む。
そうだ、今回の移動は1日では終わりそうにないのだ。
俺たちは夕方には着くだろうと勝手に想定して大して準備もない。
トラなんて今日の晩餐を振舞おうと準備している。
二人にトラへの報告と、簡単に取れる食事を代わりに作ってもらうよう頼んだ。
今回は俺だけじゃなく、全員がうっかりしていた事案だ。
常識というのはやはり大切だと、思い知らされる事になった。
こちらの件は一応済んだので改めてレオと打ち合わせをする。
住民は皆賛成してくれたようだ。
元々レオ頼みで暮らしていた集落だ、レオの意向には従うという方針らしい。
移動に関してはやはり途中で野宿を考えていたらしい。
勿論認識阻害を出来る魔道具は一緒に移動できるので、危険性は普通の野宿より薄くなるが、それでも認識せずに紛れ込む魔物はいる。
建物もない外では危険性はあがるだろう。
ある程度の準備はしてくれたようだった、俺たちよりよほどしっかりしている住人達だった。
俺はリュウと共に持参したものを渡す。
トラとルビーとハクが作った聖なる服を村人に配ってもらうことにする。
衣服の入ってた箱を開けたレオはまたしても驚愕する事になる。
「これは!? ハルキ……どこでこんなものを?」
「レオにはこれがどんなものかわかるのか?」
「当たり前じゃ、これは我らが住む王国の守護竜、聖竜様の加護がついているであろう」
この一言だけでも大事になりそうな、巻き込まれそうな予感がプンプンする。
守護竜って、聖竜なんて大層な種族をしていたが、そこまでだったのか……
しかも俺たちでは見わけのつかない衣服の加護さえ見分けられている、ハクも直ぐに正体がバレるだろうな。
どうするべきか考えていた俺にレオが改めて訪ねて来る。
「これはどこで手に入れたのじゃ!? というか聖竜様は無事なのか!?」
「この服は家で作った者ですよ、聖竜というか、はい、うちに居ます……」
なんだか大変な事になりそうだが、ハクはもううちの家族だ。
争いに巻き込まれる事なんて御免だし、国なんてものには関わるつもりは一切無いが、こちらに火の粉が飛んでくるかもしれない。
覚悟はしておくべきかもな。
「聖竜様が生きている!?」
俺たちの話を近くで聞いていた村人の一人が驚愕の声を上げると、村中に知らせに行った。
「その聖竜というのは一体どういうものなのでしょうか?」
「聖竜様と呼べ。儂は良いが他の物が聞いて良い響きでは無い。ハルキは世界がどうなっているかを知らないと言っていたな、長話になりそうだ、村の中で話そう」
そういうと自然と初めてとなる村の中へお邪魔することになった。
今日でおさらばする場所ではあるが、少しは他の者に信用してもらえたという事だろうか。
村に入ると皆が歓迎してくれた。
中には少し怖がっている子供や声を掛けるのが恥ずかしそうな人もいたが、この程度なら今後も十分やっていけるだろう。
レオが住む小屋に入らせてもらう。
ここには認識阻害の魔道具も置いてある。
生命線である魔道具の守りも兼ねてレオはここに住んでいるという。
初めて見る魔道具は、想像よりも少し小さな物だった。
それでも価値としては小国一つの予算に匹敵する代物らしい。
そんなものを持っていたレオは、やはり凄い人物なのだろう。
藁で出来た薄い座敷に座ると、レオは聖竜とこの国について話を始めた。
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