第13話 準備完了

 2日目の朝、俺たちは昨日に引き続き住居作りを始める。

 

 昨日発見したストーンスライムの核だが、なんとココ達は10個程集めてくれた。

 一応希少度Bとあるが、倒しにくさなども考慮されてなのだろうか。

 これは後日レオにも聞いておこう。


 早速俺が集めておいた土に粉末状にした核を混ぜてみる。

 最初はどの程度素材として使えるのか、固まる速度なども分からないため少量で実験だ。


 粉末を土に混ぜていくと、色が変わっていく。

 石のような灰色より少し白っぽさが強い。

 硬さは土と変わらないが、10分程置いておくと石の様に固まった。


 強度を試すために少し叩いたりしてみたが、俺が少し力を入れたくらいでは傷もつかない。

 まだ戦闘を実際に行ってないが、開拓作業である程度自分の力は理解出来たつもりだ。

 ちょっとやそっとじゃビクともしないし、土台だけと思っていたが壁にも使えそうだ。


 更に利点として軽さがある。

 土と混ぜた後も、固まった後も、元の土と変わらぬ重さだった。

 頑丈で軽い素材だし、今後も利用できそうだ。


 固まった石を鑑定をしてみると【強固石】という名前になっていた。



 早速土台としてを使う為に準備をする。

 とはいってもここからは棟梁のリュウの指示通りに動くだけだ。


 素材が揃えば後は早かった。

 有能な上司がいると仕事が捗るとはこの事なのか、俺たちは人類史上最速であろうスピードで建築を進めていく。

 一緒に見つけてくれていた鉄鉱石で釘を作ったり、金槌も作ってもらった。

 やっぱり家族に頼りっぱなしだなと、少し寂しい気持ちにもなりながら俺は作業を進める。


 3日目後に迎えるからと始めた作業は、明日1日を余裕で残して目標の住まいを作り終えていた。

 誰かと何かを作る達成感というのは、良い物だな。

 自分の力だけでは成し得ない、でも確かに自分が作った。

 俺は先程自分が作業していた場所を眺めながら清々しい気持ちになっていた。




 夜になりリビングでトラが作ってくれた食事を皆で囲む。

 皆で作業の進捗具合を話し合ってた。


 俺たちは家作りを終えた事を報告、ココは今日一日こちらの手伝いをしてくれていた。

 ルビーはトラと衣服づくりをしてくれていた。

 着の身着のままで逃げ出したであろう村人達の服は、少しボロボロになっていた。

 そういう意味でも大切な作業だろう。


 そこまでは良かったのだが、トラから驚きの報告を受ける。


「私たちが簡易的に服を作るのは良いんだけどね、ハクが少し服で遊んでて。なんかその時少し光ってるようなんだけど、離してみると何ともないの」

 服が光る?一応鑑定を掛けてみる。


【聖なる服】希少度SS 聖竜の加護を受けた衣服。見た目は普通だが様々な災いから身を護る。


「聖……竜……?」

 よくよく考えたら俺はハクに鑑定をしたことがなかった。


 ハクはボロボロの状態で見つかって、回復や絆が繋がったことで自然と簡易的な事はわかっていた。

 鑑定なんて普段から使い慣れていなかったし、状況的に気持ちが余裕が無かった。

 だとしても、今まで試しもしなかったのは俺の不注意だった。


 ハクを鑑定する。


 名前 ハク

 種族 聖竜の幼生

 ランク SSS


 確かに聖竜だった。

 他にもスキルや簡易的な能力も見れたが、今は重要な事は載っていなかった。

 皆にも伝える。


「この子竜なの!? しかも私の服が加護付きって!?」

 そりゃビックリするよな、俺もだ。

 トラはハクと自分の作った服を何度も見返していた。


「いやまあ……なんの種族かな? とは思ってたけどな、ハクはハクだし気にもしてなかったというか、ハハハ……」

 俺は軽く笑って誤魔化してみるが、大人組のココとルビーには少し叱られた。


 ハクは仲間で家族の絆も直ぐに生まれた。

 敵対はまずないだろうという安心は皆あるが、鑑定を使える俺にはしっかりと相手を確認するように念入りに注意して来た。

 これからはしっかりとします、そういえば集落に行った時もレオ相手にさえ使ってなかった。それは黙っておこう。


 連れて来たのはココだろう!? っていうツッコミもしたくなったが、それを言うのはハクに不快な気持ちを持たせてしまうかもしれないし、俺も何も知らない世界で注意不足が多いのは反省しないといけない。


 そういえば皆と作業分担の話をしてた時、ハクが張り切ってるように見えたのだが、これだったのか?


「こりゃ大層な出迎えの品になっちまったな」

 ココが笑いながら言うもんだから、場が少し和んだ。



 気を取り直して明日一日の作業を改めて確認していた。

 そして俺はまたうっかりをやらかしていた。


「寝具の事考えてなかった」


「床に寝かせる気だったの!?」


 トラには驚きのまま突っ込まれる。


 どうも俺には抜けている所が多いようだ。居住する家を建てて肝心の中身がなかった。

 リュウとココにはまた明日一日手伝ってもらおう。


 時間に余裕がありそうだからと、他にも役立ちそうな物を一緒に作ることにした。


 寝る為のベットと布団、後は作った衣服や今後利用するであろう一般的な家具。

 そういえば皆が食事する食器類なんかも必要か?


 考えれば考える程自分の考えの足りなさに頭を抱えていた。


「まあハルキも皆もこんな経験初めてだし、皆で協力してこうね?」

 さっき大声でツッコミを入れてたトラが優しい言葉を掛けてくれる。


 俺は涙目になりながらトラに感謝すると、皆で話し合って必要な物を揃える事にした。


 そんなこんなで次の日も作業を無事終え、村人たちを迎える日になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る