第12話 受け入れ準備

 家に着くと皆が待ちわびたかの様に飛び出してきた。


 ドンッ!


「おかえりハルキ! 怪我はなかった!?」

 リュウは一目散に俺の懐にタックルを決める。


 俺はそれを難なく受け止め、「ただいま、大丈夫だよ」と軽くリュウの頭を撫でる。

 家族団らんの時間を堪能したいが、まずは報告からだ。

 皆をリビングに集めて掻い摘んで話をする。


 移民の件についてはすんなり了承してくれた。

 ココが言う通り俺が決めたならと、泣かせるじゃないか。

 そこで俺は迎えるまでの3日間で出来る限りの準備の協力を頼んだ。


 かつての村程度の生活をさせたいとは思うのだが、今は時間が無い。

 まずは住居を作る事を第一目標とした。


 食料に関してはまだ余裕があるだろう、いざとなればココとルビーに頼んで取ってきてもらう。

 今までは任せっきりだったし俺も手伝えるようになった方がいいかもな。


 水に関してだが、家の付近には川が無いようだった。

 それでも俺たちが困らなかったのは、一緒に飛んできた家電が全て生きていたから。


 水道、電気、ガス。生活に必要な物はそのまま使えるのだ。

 家ごと飛ばされたのだから新たにどこかに繋がっているのか、それでも今は助かってるのでありがたく使わせてもらっている。

 だがいつ使えなくなるかもわからないのだ、別の手段も考えていかないとな。


 ここに来てからの生活については改めて住人達と相談することにして、今はどういう風に住居を作るかだ。

 何せ3日しかないのだから、一軒ずつ丁寧に作るのは難しい。

 見た目は度外視にして、大きく雨風を防げ、安心して寝られるスペースを用意しようという事になった。

 イメージとしては平屋の市民ホールのようなものか。


 とにかく衣食住だけはしっかり提供したい。

 この件を受け入れた俺の責任でもあるからな。



 俺は皆にそう伝え仕事の分担をした。

 ココとルビーには建材を調達してもらう。


 とはいえ俺は素人に毛が生えた程度の知識しかない。

 自分の家の補修程度ならやっていたが、この世界のどの素材が適しているかまでは鑑定で見てみなければさっぱりだ。

 とりあえず使えそうな物を少しずつ取ってきてもらう事にした。

 木材は余りあるので基本は木を使うが、石や土もある方が便利だろう。



 リュウと俺は建築に取り掛かる。

 主に俺が素材運搬、リュウは加工を行い、最後に皆で組み立てよう。

 こういう時に加護の力がありがたい。

 普通なら何か月も掛ける建築を3日で行うというのに、可能だとしか思えない。


 トラには今まで通り家の事をしてもらうが、簡易的な服を作ってもらうことにした。

 ココ達が集めてくれた素材に布のような物があった。

 制作するならリュウの方が適しているが、これは生活してく上で着るだけの物。

 特別な力よりも、女の子のセンスに任せた方が上手くいくだろう。

 トラも任せて! と張り切っていたが、それ以上に張り切っているハクが心配だ。



 家に着いたのはまだ日が高い内だったため早速作業に取り掛かる。


 俺とリュウはひたすら丸太を加工して組み立てやすいようにしていく。

 土台を作ればすぐ骨組みを作り上げられる程度には出来ただろうか。

 家作りの知識は無いが、リュウは加護のお陰で設計に関しては任せてと言われた。ありがたや。


 そんな作業を1時間程度こなしているとココ達探索組が戻ってくる。

 帰還が早いが持ってきた種類も多い。


 どれどれ……

【鉄鉱石】希少度D 鉄が含まれた石。加工すれば鉄になる。

【粘土石】希少度E 粘土が含まれた石。加工すれば様々な物質になる。


 他にも様々な金属や石材があったのだが、中に一つだけ特異な物質があった。


【ストーンスライムの核】希少度B ストーンスライムを倒した時に稀に残る素材。土や砂などに粉末上にした核を混ぜると強固な石に変わる。


 モンスタードロップってやつか?

 見た目は金属のような丸い石にしか見えないが、これを使えばセメントのようなものが作れるかもしれない。


 早速ココ達に聞くとやはり探索中に倒したモンスターから手に入れた物らしい。

 使い方を説明すると、リュウにも「使えるね!」と反応されたので、ココとルビーにはストーンスライム探しをしてもらう。


 希少度Bと書いてあったが、そんな簡単に手に入るだろうか……

 と一抹の不安が過ったが、俺は土集めに精を出す事にした。



 こうして1日目が順調に過ぎていく。

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