第7話 ココが拾って来た

 数日経つと、ある程度の広さの土地が出来た。

 今後更に広げるかもしれないが、今の所困らないくらいにはなっただろう。


 貯まった木材を利用し木の柵の作成を始める。

 防衛の目的で作ろうかと思っていたが、倉庫に余っていた野菜の種を見つけたため畑を作ろうと思う。


 どうやら近くをうろつく無警戒な魔物は、誰か1人が追い払いに行くだけでも済む程度の魔物しかいないらしい。

 中にはランクBの魔物もいたが、こっちが強すぎる訳では無いと思いたい。


 それでも畑を作るとなると、やはり柵は早急に欲しい。

 魔物避けになる草も見つけたし、それを組み合わせればかなりの効果が見込める。

 こんな害獣避けが元の世界にあれば、農家の方々は歓喜だろう。



 柵の作成はリュウに任せている。


 生産の加護というのはとてつもない力だった。

 リュウが考える物に瞬時に作り替える。



 例えば丸太を触りながら使いやすい木材を思い浮かべれば光り輝き木材に。

 木材と魔物避けの草を合わせて柵を思い受かべると魔物避けの効果付きの木の柵に。


 魔力を消費するようだが、神様に魔力を上げて貰っている為か「いくらでも作れるよ!」とリュウはいっていた。



 俺はそれをせっせと設置していくだけの作業だ。

 柵を運び、槌で打ち付ける。



 それを繰り返している内に夕方になっていた。

 このペースなら後2日もあれば家の周りをぐるっと囲めるだろう。



「おつかれリュウ」


 そういって頭を撫でてやると、とても嬉しそうな顔で喜んでくれる。

 弟のような息子のような歳の差だが、愛おしくてたまらない。



 夜は皆で食卓を囲んでその日の出来事を報告しあう。

 目的は情報の共有だが、俺はこの時間が一番好きだ。

 何年もこんなに話をすることなど無かった俺は、時間を忘れて話をしていた。


 最初は慣れなかったけど、ここに居る皆は俺の家族だ。

 お互いの性格はとてもよく知っている。

 自然と話に華を咲かせる。


 とても充実した日々を過ごせている俺は、生きている事に喜びを感じていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 数日も経つと柵は完成した。


 俺とリュウは畑を作る場所を決め、土地を耕す。

 力は格段についていた為、くわで簡単に耕すことが出来る。


 この畑が出来たら家の周りで出来る事はあまり無くなるかな。

 リュウは家において、俺はココ達と探索に加わるか。

 早く人里を見つけておくのも大切だろう。


 そんな事を考えながらせっせと鍬を振る。



「おーい! お湯を沸かしてくれ! 暖かい飲み物も頼む!」


 まだ昼下がりだが、遠くから大きな声で叫びながらココとルビーが帰ってきた。

 一大事か? 早い時間に戻ってきた二人に不安になる俺だが二人は走って駆けてきたので怪我はないのだろうと安心する。



「どうしたんだ、その……犬?」


 ココは大事に毛玉を抱えていた。

 犬? でも羽のような物も生えている。

 こちらの世界の生物は、少し常識に当てはまらない存在が多い。



「魔物に襲われていた所を助けたんだ。俺は狩った獲物を取りに戻るから、こいつの介抱を頼む」


 そういうとココは俺にその毛玉渡してまた森に戻る。



「ルビーはついていかなくていいのか?」


「大丈夫よ、ココなら迷う事はないわ。そこまで遠くもないんだし。それより早くその子を。」


 冷静に指示をされて俺は慌てて家に戻る。

 優先順位がどうしても家族に偏りがちだが、今はこの子を助けてやらねば。



 大きな傷などは無いようだが、家にいるトラに回復を頼む。

 トラが貰った回復の加護は、魔法とはまた違うのか最初から使えた。


 手をかざすと光が包む。

 どうやら意識が戻ったようだ。


 とてつもない力を貰ったんだなと、改めて実感する。


 俺はこの力でトラにマッサージを頼んでいた。

 申し訳ない、神様。



「体力は回復したようだけど、なんかまだ元気無いね。」


 トラが言う通り毛玉から見える顔は少し元気がない。


 どうしたのだろうか、俺は何かしてあげられるだろうか。

 頭に手を置き撫でながら、この子の事を考えている。



「ハルキなにしてるの?!」


 トラが声を上げる。

 周りに居たリュウやルビーも驚いた表情をしていた。



「何って頭を撫でているだけだよ……え?!」


 ぼーっと撫でていた手から光が出ていた。

 俺は回復の力など無い、この光はなんだ?


 その光は俺と毛玉を包み、光が消えた。



「ああ、そういうことか」


 毛玉、名前は「ハク」というらしい。

 ハクは元気に跳ね回っている。



「状況が掴めないんだけど、説明してくれない?」


 ルビーに促されて俺は説明する。



「今の光は家族の絆がハクと結ばれたみたいだ。あ、この子はハクというらしい。恐らく俺がこの子の事だけを考え、ハクがそれを受け入れてくれたようだ。この力はお互いの力を上げるだろ? だからハクにも力が戻ったようなんだ。」


 この世界に来てから、いや、前の世界から、俺はずっと家族の事しか考えていなかった。

 自分の事すらよりもずっとずっと家族だけを考えていた。


 その俺が目の前に弱ったハクを見てひたすら何か出来ないか、ハクが元気出る方法はないかと考えながら撫でていたのが伝わったらしい。


 それを受け入れてくれたからこそ、ハクと絆が結ばれた。



「その力はお互いを受け入れる事で効果を発揮するのね。今後の生活で更に相手が増えるかもね。」


 ルビーはそういうと少し機嫌を損ねたような顔をしている。



「皆大切だよ。ルビーも俺にとっては大切な存在だから。」


 嫉妬してるのだろう。普段は冷静なルビーも俺に対して嫉妬してくれているのかなと思うと可愛らしく見える。

 少し顔の赤くなったルビーを見て、皆笑っていた。



「それより、まず体を洗ってやってくれ……」


 丁度戻ってきたココが見たのは、ハクの汚れが家に広がった光景だった。

 汚れていたまま元気に跳ね回ってたのだ。


 結局その後皆でハクのお風呂と掃除をして、一日を終えた。

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