第3話 起きたら知らない世界に

「どこだここ……」


 周りは草木に囲まれ、遠くには近くの町が見える。

 いつもの景色がそこになかった。


 家の周りは草が生い茂り、周りには木が生えている。

 というか、森の中に家がポツンとある。

 いままでなら見えていた町など見えない程、生い茂った木。

 

 木の葉の間から見える空が明るい。そこには鳥が飛んでいる……鳥?

 鳥にしては少し大きすぎるような、それに飛ぶスピードが速くすぐ見えなくなった。



 ……待て待て、冷静になれ。

 俺は寝て起きて、子供がいて俺の家族だといい、何故か森の中にいる。

 うん、わからん。


 それに、あれは夢だったのか?

 強烈な頭痛に襲われ床に倒れた。

 そのまま家族に見守られながら俺は意識を失った。

 あの痛みは夢だとは思えない。

 よくわからない場所に飛ばされ、家族の名前を語る子供……

 とりあえず話を聞いてみるか。

 少し落ち着いた俺は家の中に戻る。


 戻るとテーブルに食事が並んでる。

 炊き立ての米に味噌汁と目玉焼き。

 大した料理ではないかもしれないが、誰かが作った食事は久々だ。



「これはお嬢ちゃんが作ったのか?」


 ニコッと笑いかけてくる女の子。くそ、ちょっと可愛い。



「ハルキもお腹すいたでしょ? まずはご飯を食べようよ」


「ありがとう」


 そういうと俺はテーブルに着いた。

 寝て起きただけの割にいつもよりお腹がすいている。



「いただきます」


 俺はそういうと目の前に食事にがっついた。



「ふう……ごちそうさま」


 あっという間に平らげてしまった。

 とても暖かい気持ちになっていた。

 目の前にいる女の子と、リュウだと名乗る男の子がニコニコとこちらを見ている。

 子供に笑われる程、無我夢中に食べていたかな。

 少し耳が赤くなる。



「少し話を聞いてもいいかな?」


 俺はそういうと二人に質問を投げかけた。



「二人の名前は?」


「俺はリュウだよ! さっきも言ったのに忘れん坊だなあ!」


 そういうとリュウは無邪気に笑う。



「私はトラよ。ハルキはまだ何も知らないものね」


 女の子はくすっと笑いながら答える。



「リュウ、トラ。それは俺の家族の名前なのだが、あいつらはどこに行った?」


 俺の家族は人ではない。リュウは犬、トラは猫だった。



「ハルキと一緒にいたリュウとトラは、私たちなの」


 ここに来てまでまだ悪戯しようとするのか。

 少し苛立つが、余りにも説明付かない現状を確認するために話を聞いてみる。



「私たちはここに来る時に、人に生まれ変わったの。リュウとトラ、それが今の私たち」


 ここに来る前。

 やはりいつもとは違う場所に来たみたいだ。



「勿論ルビーとココも一緒だよ。今は付近を見てきてもらってるから、後で帰ってくるわ」


 ルビーとココも人になったらしい。

 まだ信じた訳では無いが、質問を返してみる。



「ここに来たって言うのはどういうことだ? 確かに外は見慣れない場所だった。でもここはいつもの家だ。家が別の場所に移った?」


 自分でも訳がわからない事を言っているが、とりあえず聞いてみるしかない。



「そう、ここはいつもの場所じゃない。神様が言うには別の世界と言っていたわ」


 別の世界。聞けば聞くほど訳が分からなくなってくる。



「ハルキがいきなり倒れて、私達とてもビックリしたの。そしてそのまま動かなくなった。とても、とても悲しかったの……」


 そういうと、女の子は少し俯いてしまった。

 やはりあれは夢では無かったのか……



「このままハルキを一人にしないで、どこにでも付いていくから。だから離れ離れにしないでってお願いしたの」


 少し涙目になりながら女の子は続ける。



「そうしたら私達の前に神様が現れたの。聞いたよ? ハルキも私たちを最後まで思い続けてくれたって」


 そうだ、俺はどうなっても良かった。

 ただあいつらを置いていく事だけが心残りだった。



「私たちは真の絆で結ばれている。だから私たちの願いを叶えてくれるって言われたの。私たちは迷わなかった。リュウもルビーもココもどこまでもついていくよって言ってくれた。そしたら神様は私たちをこの世界に送ってくれたの」


 そういうと女の子は綺麗な宝石のような石を目の前に出した。



「ハルキが起きたらこれに触れてくれって神様が言ってたの。きちんと説明するからって言ってたよ」


 まるで物語のような話を聞かされた俺は、女の子に頷きながらその石に触れた。



 その瞬間俺は今までいたリビングとは違う空間に飛ばされた。

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