顛末

敦彦はおぞましいながらも「まだ」常識的な世界線を選んだ。世界を渡る量子サイフォンも、奇っ怪な妻も、中国本土へ出兵する空母乗りの娘達もいない。

しかし、義実家の莫大な資産が無用の長物になる世界。


移行手続きは呆気ないほど簡単だ。

頼子が二つ折り携帯で110番通報した。

それで地元警察が飛んできた。

「望月頼子さんですね。お母様から捜索願が出ています。そして鈴木敦彦さんですね。略取誘拐容疑で逮捕状が出ています。十七時●●分、確保」

男は後ろ手に手錠をかけられ、パトカーに乗せられた。それで世界線の分岐が確定した。

「そういうこと」に落ち着いたのだ。

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