パニック障害
パニック障害を抱えた二人の受験生をもつ母親。その重みは男の能天気な演出で軽減されるものではない。
「あなたのせいよ! 隠れ家に行こうって、逃げるようにして来たのに。わたしを追い詰めないで!!」
頼子はスリッパをつっかけたまま、廊下へ出ていった。フロア奥の自販機コーナーはシンと冷えていて、静かだ。彼女は来たそうそう、女の嗅覚で拠り所を見つけ出した。
チェックインを済ませて、予約してあった海鮮レストランに行こうと誘っても、青ざめた顔を振るだけだった。
あげく、敦彦が周到に仕組んだ罠だという。女はどいつもこいつも他罰的な生き物だ。ちょうど、塾の受験直前合宿とやらに娘二人が参加する。そのタイミングを見計らって、行こうといいだしたのは敦子の方じゃないか。敦彦は仕方なく二人分の生け作りを酒で流し込んだ。
敦彦はフロントに無理やり頼み込んで、自販機コーナーのソファをベッド代わりにした。
頼子は相変わらず何かにおびえたままで、敦彦も眠れない朝を迎えた。宿泊客の迷惑になるからと、ホテルマンに促され、頼子は島の診療所に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます