小柳農場
「来月には出荷できると?」
ハウスに咲く向日葵に頃菜は満面の笑みを返した。「ばっちりです」
小柳社長の目算では初旬の品評会で競合他社を出し抜き、認可される前に先行量産型を日車草の郷に出荷する。観光客のSNSに乗じて初動を稼ぐ作戦だ。
「そう!自粛自粛で息苦しいものね」
小柳笑子は大きな日輪に言い聞かせた。心なしか花がかしぐ。「早計では?」と伊織が懸念した。頃菜チームの天敵だ。「三重冗長のAIが安全だというのよ」名前に響きにこじつけた難癖でしょうと言い返した。
競合チームの主任は慌てて苛めを否定した。ダメ押しに謝罪する。
「一般論よね。漠然とした不安は消費者に残ると思うの」
社長が擁護する。その先入観を払うため頃菜は人一倍の苦労を費やしたのに。
幼少時に流行った感染症が進路を歪めた。権化の如く蔑まれ、苦学と成果で一矢報いてようやく世界最先端の農園に入社した。「
その苗字もとっとと変えたい。頃菜は無言で鉢植を一つ研究室に持ち帰った。
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