第17話「メルヘン」

私、お花畑で眠ってる


風が吹いて、

赤ん坊の泣き声が聞こえるの


ごめんね、赤ちゃん


今は、そらの下にある鉄塔が気になるの

あの塔に王子さまが閉じ込められてる

かわいそうに


鉄塔につながる電線はゆれる

風が吹くからゆれるのね


私の下に敷かれた花の絨毯、

いい香りね


たとえて言えば……


芳香剤……


干し草の匂い……?


牛のふん!?


えっ!?待って、ここお花畑でしょ?

それとも……


―― モーーーーッ ――


と、鳴いているのは牛……?

近くには、牛小屋……


私、そろりそろりと起き上がって、

鳴いている方へ、

小屋の方へ行ったの


そしたら、


赤ん坊の服を着た、

中年のおじさんが、

仰向けに寝ていて、

バブバブしてる……


私と目があったら、


モーーーーーーーーーーーーーーッ

と泣き出した







いや…泣きたいのは、

こっちだから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る