第18話「夜景都市」

ピューと吹く口笛

思い出したくない過去が、

段々と炙り出されていく


あいつがいたのはこんな理由だ


―― あんたがいたから、こっちが得になるのよ ――


俺の存在はどうでもいい

そういうことだ


世の中を踊り続けるスキルがあったから、

あいつは傍にいた


吹かしたタバコ

煙は、フーと吹けば、

消えてしまいそうなのに、

そんなものが意外と消えない

悔やんだ時と同じことだ


夜景都市

マンションの最上階

ベランダから見る景色は、

俺の気持ちとは裏腹に、

きれいすぎて、

明るすぎる


まるで、あいつの傍にいた時のようだ


そんなことを想像していると、

南から風が吹いてきた

それが妙に生暖かくて、ムカついてくる


踊れば俺は、

いつまでもあいつといられた

体が壊れなければの話だけど


医者の言葉も聞きたくないくらい、

俺は、クソ野郎と叫びたくなる

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