インパール作戦直後

チドウィンの濁流は山崎トモの下着を無意味にしていた。兵士に連れられ渡河する途中で英軍機の掃射を浴びた。1945年2月。日本軍は英領インドから中国の補給路を断つべくビルマ南部に進駐していた。イラワジ湖畔で連合軍との会戦に備えインパール作戦の壊走兵が次々と合流しつつあった。トモが属する第15軍は前線基地であるマンダレーの死守を任された。しかし制空権を奪われ、装甲車両もない状態で士気は下がる一方、慰安婦は一層の奉仕を強いられた。トモは船がシンガポールに寄港した際に買った綿製の一張羅を大事にしていた。二年の間に草臥れてしまったが繕っている。実質上、部隊付きとなった彼女らは炊事洗濯から下士官の身支度まで無給で強いられた。中国の捕虜になると股裂きされると脅され素直に従っていたが、ある日、同僚からこんな話を聞いた。女あての音信は本土から届かない。

「内地から来たって人が母の顔見知りだったの。心配してたって…」

「まさか、兵隊さんが手紙を!」

「憲兵に聞こえるわよ」

その後、告発者本人は壕に軟禁され手榴弾を投げ込まれたという。ミチナ陥落後に米兵がトモを保護したという。

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