ブラックシリカ
「結構、裏でやらかしてたのね」
御子はまとめサイトを一巡して同情の余地なしと判断した。施設長が介護報酬を水増し請求していた。「閉鎖の理由は不正発覚と指定の抹消…だけじゃないでしょ」
小春が肩を揉み解す。ブラックシリカを用いた砂岩浴は御子を週二回癒してくれる。
「貴女にも何か見える?」
「少しは…私は攻撃型の霊能者だから」
前置きした上で、妹は告げた。老婆は遺族ではない。戦没者がふらりと生還する事は混乱期の茶飯事だった。既に受給資格を得ていた妻を慮ってブラジルへ移民したのだ。その後、消息を絶った。そこまでは御子の裏付けと一致する。山崎トモは月に12万円の遺族年金を受け取っていた。
「施設の奥にロウリュがあったわ。豪奢な作りね。姉さんを呼んだのも良心の呵責かしら」
「やっぱり砂つながりか。本人は先月十日に入浴介助中にヒートショックを起こして急死してる」
「でも、周知の事実をわざわざ死後に告げる?」
妹は鋭い。御子はうーむ、と唸った。「司法取引の積りかしら。自分の不正を容赦して欲しい」
微罪が霞むほどの巨悪ね…例えば施設長が彼女の年金を着服してたとか」
小春の指摘をうけ、御子はガバと跳ね起きた。ブラの隙間から砂が落ちる。気にする暇はない。水着に服をひっかけ夜の街へ飛び出した。ガチャガチャと合鍵で玄関を開け、真っ暗な廊下を進む。スマホの灯りを頼りに浴室の砂を掘り起こすとぼうっと白く光る紙片が出てきた。通帳だ。名義は山崎トモ。遺骨に見えた物はこれだった。素早く頁をめくると施設の名前がある。ほぼ全額、引き出されていた。
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