第7話 あれから15日後 マリィ視点(4)

「テオ様、そうなのですか? マリィと私は、そんなにも違っていますか?」


 唖然となっていたら、お姉様が目を丸くして首を傾けた。

 わっ、わたくしもビックリしていますわっ! この写真は両親や祖父母、撮影時の記憶がなければ自分達でも見分けがつかないのにっ。それでも、全然違っていますの!?


「そうか、そういえば一度も口にしていなかったね。そうだよ。ジュリエットとマリィは、まるで違う。俺の目には、別人のように見えているよ」

「そ、そうなのですね。テオ様の瞳には、私達はどのように映っているのですか?」

「ジュリエットはそれこそ聖女のような、穏やかで優しい顔をしている。マリィは、そうだね………………。少女騎士、かな。とにかく、力強さのある素敵な顔をしているよ」


 途中で妙な間があったのは気になりますが、それはさて置いて。

 聖女と騎士。そんなにも、違いがあるだなんて……。


「れ、れひたらテオ様!」

「「? れひたら?」」

「こほん。でしたらテオ様っ。こちらの写真の2人は、どっちがどっちですのっ?」


 今度のは7年前で、お父様の要望で同じ格好をして撮ったもの。

 この頃は3年前より恨んではいなくて、きっと攻撃的な色もあまり出ていない。顔も近いはずっ! この頃でセーフなら大急ぎで精神もお姉様を意識するようにして、大急ぎで修正すればまにあ


「右がジュリエット。左がマリィだね」


 即答。しかも、1秒もかかっていない……。


「て、テオ様……。どうして……。そんなにも簡単に、見分けられましたの……?」

「この頃は今よりもやや判断しにくいけれど、人という生き物の本質はそうそう変わらない。根底にあるものは、いつも同じ。要するにジュリエットはいつまでもジュリエットで、マリィはいつまでもマリィ。2人が2人である限り『そこの違い』が顔に出続けるから、造作もないんだよ」


 もちろん、魂で見れば簡単だけどね。言葉で違いを証明するのは難しいな、ははは。

 そうテオ様は笑い、わたくしも、心で笑った。


((そうでした、そうでしたわぁ。見分けられるのはこの世でテオ様だけで、しかもその理由は常識離れしたもの))


 即ちお姉様に変装したわたくしの写真が出回り問題になった場合、テオ様がお姉様の無実を訴えても証明にはならない。

 予定とは違ってテオ様が冷めての婚約破棄はできませんが、素行不良によって#テオ様の実家__スロス家__#から破棄されてしまう……っ。同じ結果に出来ますわ……!


((わたくしってば、焦って見落としていましたわ。作戦は、問題なし))


 テオ様にわたくしの思惑を知られる事になりますが、それも誰に言っても信用されない。傍目には、『婚約者を庇い妹に擦り付けようとしている』に映ってしまうんですもの。

 完璧、ですわ。


((ふふふ。ふふふふふ。ありがとうございます、テオ様。貴男のおかげで、無事作戦その3が――))

「おっと、もうこんな時間になってるね。そろそろ支度をしようか、ジュリエット」

「楽しくって、全然気付きませんでした。そうですね、テオ様。お世話になります……っ」


 密かにほくそ笑んでると懐中時計を一瞥し、テオ様がお姉様の手を取って立ち上がった。

 ??? ???

 支度? お世話になります? お姉様達は、どこに行こうとしていますの……?


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