第7話 あれから15日後 マリィ視点(3)

「てっ、テオ様っ! わたくしのっ! わたくしの質問に答えてくださいましっ!」


『どんなに上手くお姉様に成りすましても、見破られるのではないか?』。そう感じたわたくしは埃をかぶっていたアルバムを引っ張り出し、メイクとウィッグを解いて部屋を飛び出し庭へと走った。

 お願い、ですわ……! それが、間違いでありますように……!


「やあマリィ。質問? いいよ、なんだい?」

「この写真には、わたくしとお姉様が写っていますのっ。どちらがマリィでジュリエットか、分かりますかっ?」


 わたくしが見せたのは5年前のハロウィンに撮った、昔話に出てくる『双子の妖精』の仮装をした際のもの。当時は髪の長さもおんなじで、撮影した記憶がなければ、自分でも見分けがつかないくらいな一枚。

 こんなにも瓜二つなのですから……。分かりません、よね……?


「わぁ、懐かしい写真だね。テオ様、いかがですか?」

「………………………………」


 お姉様はニコニコしていて、テオ様は真顔で黙っている。

 これは。これは……っ。


「………………………………」


 およそ30秒経っても、様子は変わらない。

 やっぱり……っ。これっ、そうですわ……っ。


((よかった……! テオ様は、見分けがついていない……っ!))


 わたくしとお姉様は、同じ血を引いている。恐らくはソレと顔出しが何かしらの相乗効果をもたらして、惑わせているんですわ……っ。

 姉妹という、実に忌々しい事実が……! 今は追い風になっているんですわ……っ‼


「すみません、テオ様。お姉様とテオ様のお話が聞こえてきて、おもわず確認をしてしまいましたの。流石にこれは、分かりませんよね――」

「ん? ああいや、こちらこそ済まない。つい夢中になって、答えるのを忘れていたよ」


 は?


 は……?

 夢中になって、忘れていた……!?


「これは初見の写真で、ジュリエットの可愛さに見惚れてしまっていたんだ。ジュリエットは向かって左、マリィは向かって右だね」

「テオ様、正解です……っ。私達はそっくりなのに、これも魂の理解ですか?」

「それもあるのだけれど、今回の場合は目でも理解できたよ。だって君達は、まるで顔が違うじゃないか」


 ДβΗΣΨ!?


 この人、なに言ってますの……!?

 わたくし達の顔が、違う!? しかも、まるで!?

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