第4話 さあて。学舎で細工を始め――ええ!? なんですのソレは!? マリィ視点(2)


「お、お姉様。お姉さまっ。テオ様のお気持ちは、とても有り難いですけど……。これは、やり過ぎですわよね?」


 わたくしは苦笑いを浮かべつつ、右隣りに顔を向ける。

 愛する人に嫌われるのは、とても辛い事。流石はわたくしっ。パパっと名案が浮かびましたわっ。


「男性のツインテールと異常な大きなの丸眼鏡は、限度を超えてますわよね……? ジュリエットお姉様」

「………………………。………………………」


 お姉様は肩を窄めて、俯いている。

 はぁ、よかった。普通、そうですわよね。

 テオ様のソレは自分を想っての事だから、言いたいけど面と向かっては言いづらかったみたいですわね。


「お姉様、偶にはハッキリと言ってくださいまし。ほら、テオ様にお伝えしましょう」

「う、うん、そうだね。………………あの、テオ様」


 ジュリエットお姉様は顔を上げ、深呼吸を2回。ゆっくり呼吸を整えたあと、勇気を振り絞って――



「すっ、素敵です……っ。テオ様の良さが引き立てられていて、その……っ。とっても、お似合いですよ……っ!」



 ――ρДβΗΣΨΠΓΞ!?

 お似合い⁉ これが、お似合い!? 嘘でしょうっっ!?


「ツインテールと丸眼鏡の、コントラスト……っ。お顔の前と後ろでの、夢の競演……っ。最高であり、天才的な発想です……っっ」

((……う、ううん、違う……。これは、嘘でもお世辞でもない……。この女は、本気でそう感じていますわ……))


 だって、よく見ると赤面していたから……。

 きっとこの人は、あばたも笑窪な状態。テオ様がやることなら、何でも良く映ってしまうんですわ……。


「そうか、嬉しいよジュリエット。婚約者に絶賛されつつ周囲の関心を失くせるだなんて、これ以上の妙案はないな」


 お姉様がべた褒めするから止める気は0で、卒業まで続ける事が確定した。

 つまり……。つまり…………。もう、駒を焚きつける事はできなくなった……。


「??? マリィ? どうかしたの?」

「顔から生気が抜けているぞ? 何かあったのか?」

「…………いいえ、なんでもありませんわ……。テオ様、お姉さま……。予鈴が鳴りましたし……。さあ、参りましょう……」


 わたくしはトボトボと歩き出し、そのあともずっとゲッソリしたまま。この日は一日中机で突っ伏していて、帰宅するとベッドに倒れ込んだのでした……。




 こんな事に……。こんな事に、なるなんて……。

 ほんの僅かも……。作戦を、始められないなんて…………。

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