第5話 放課後(帰宅後)~マリィとジュリエットの部屋で起きていたこと~ 俯瞰視点(1)

「……………………。作戦その2が、失敗するなんて……。悪夢ですわ……」


 ミラ邸の2階にある、マリィ・ミラの部屋。そこにあるベッドで大の字になり、マリィは呆然と天井を眺めていました。

 彼女が準備に要した期間は、5か月間。およそ376時間も秘密裏に動いていたため、そのショックは非常に大きなものとなってたのです。


「お姉様達の目を盗んで、駒を探して……。お姉様を仕留められるように、睡眠時間を削って作戦を立てたのに……。それが……。こうもあっさり台無しになるなんて……」


 今日は、一昨昨日以下。仕掛けることさえ、できませんでした。

 それが更にマリィの心にダメージを与え、本日2214回目となるため息が零れました。


「……しかも……。しかも…………。あんな形で、滅茶苦茶にされるなんて……」


『聴取の結果、マイリスの動機は『嫉妬』――俺がジュリエットと仲良くしている事が許せなかったそうだ。そこで第2第3のマイリスを生み出さぬよう、ジュリエットが嫉妬されないようにしたのだよ』

 銀髪ツインテールと、ドデカい丸眼鏡の男。


『すっ、素敵です……っ。テオ様の良さが引き立てられていて、その……っ。とっても、お似合いですよ……っ!』

『ツインテールと丸眼鏡の、コントラスト……っ。お顔の前と後ろでの、夢の競演……っ。最高であり、天才的な発想です……っっ』

 銀髪ツインテールとドデカい丸眼鏡の男を見て、赤面する女。


 作戦大失敗の理由はあまりに常識を外れており、「はぁ……」。更に更にマリィの心にダメージを与え、本日2215回目となるため息を吐きます。


「……………………ぁぁ……。夜会の前に……。戻りたいですわ……。戻って……立ち回りを変えて……。1から、やりなおしたいですわ……」


 あの失敗がなければ、ツインテールとドデカ丸眼鏡はなかった。こうやって凹む事もなかった。

 マリィはあの夜の自身の行動であり判断を悔やみ、茜色の空に祈りを捧げます。

 けれど当然、時間の逆行など発生しません。正確に時を刻む時計の音が、静かな室内に容赦なく響きます。


「…………………………もう、起きているのも辛いですわ……。とりあえず、今は寝ましょう……。眠って、何もかも忘れましょう……」


 作戦その3の準備をしなければなりませんが、そんな精神状態ではありません。そのためマリィはうつ伏せになり、現実から逃げるように眠りの世界へと移動したのでした――。



 これが、マリィの部屋での出来事。

 対して、同じ階にあるジュリエットの部屋では――

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