贖罪と告解

永遠とも思える沈黙が終わった。

「…すまなかった。ああするしか方法が無かったんだ」

父親は咄嗟の判断を弁明した。ヴァルキュリアがエルフの子供たちをさらいに来たのだ。やむなくエテュセをジョセフソンに託した。

没落したとはいえ、平定戦争関係者の養女を正当な理由なしに奪えまい。

エテュセは言葉を失い、落涙した。胸が熱く、張り裂けそうだ。今の気持ちを表現する言葉が出てこない。

「すまなかった。寂しかっただろう」

「どうして…」

少女は嗚咽した。

「どうして、ママを棄てたの」

「棄てたんじゃない!!」

彼は声を大にした。

「お母さんはヴァルキュリアについていったんだ。俺のやり方に反発してね」

「そこに伸びている女なの?」

「違う…」

「さっきから、違う違うっていい加減にしてよ!」

エテュセはもったいぶった父の言い回しに逆上した。

「グレイバス監獄だよ。イミルワが届いたんだ。元気でやっているって。そして、自分はエルフ不信に陥ったと。だから、今度は女と機械に愛情を注ぐってね」

長女はぐうの音も出ない。あまり深く考えたくないので、最後の疑問符を投げた。

「森のお金は全部、先生が使ってしまったの?」

「有益な貴金属は残してくれている。道場の床板を外してみろ。そこに埋もれてる。半導体と言ってな。俺たちエルフや人間の思考を代役する道具の原材料だ」

父はそういうと、意識を失った。

「逃げなくちゃ」

エテュセは一目散にジョセフソン道場を目指した。


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