どうして、あたしを


「我々を舐めて貰っては困る。トホホギスの治安を掌握し、日夜、市民に安寧を供している。証拠に瑕疵はない」

メスト・エジルが自信たっぷりにエテュセを否定した。

「目に見えるものが信じられるとは限りませんよ」

黒エルフがそれを言うか、と警部はのけ反った。そして、すぐさま反撃する。

「では、目に見えない証拠を…そうだな。不都合な真実、隠された秘密はどうだ。例えば、メドトロニックが肩代わりしたお前の莫大な治療費。トホホギスの誰が潤ったか」

しつこい追及を徒手空拳が制した。

「パパ!」

エテュセの眼前でジョセフソン・カルナックの格闘技が炸裂した。一瞬で取調室のドアを蹴破り、華麗にヴァルキュリア、メスト・エジルを順になぎ倒す。

目にも止まらぬ瞬殺だ。

そして満身創痍の男性エルフはへたり込む。

「はぁ……藩主だ」

彼は息を整えると、続けた。

「彼にお前を診せた。ジョセフソン流は薬膳も守備範囲でな。彼は自分の領地の一件が心残りでメドトロニックの森に暇さえあれば出入りしていた。罪滅ぼしのつもりなのだろうかな。よく見かけたよ。面識があったのはその縁さ」

父と恩師のつながりにエテュセは戸惑った。そして、ストレートな疑問をぶつけた。

「どうして、あたしを棄てたの?」

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