-第14話-決戦
店員さんについて行き、席に案内された。
まず安芸さんがソファー席に座り、その隣に姫芽さん、そして向かい側の椅子に俺が座った。
俺の隣の空いている椅子にはみんなの荷物が積み上げられてる。
「まずスイーツバイキングの説明をさせていただきますね。制限時間60分の間にあそこにあるやつを好きなだけ食べてください。それでは楽しんでくださいね」
店員さんの説明はすぐ終わり、入出ログの書いた紙を置いてまた受け付けへと帰って行った。
「じゃあ食べに行こっか」
「行こいこ!」
「なら俺はここで待ってるね」
荷物番がいないと彼女たちも不安だろうから俺はそう申し出た。
俺より女子2人の方がスイーツ好きそうだし、俺が待っていた方が都合がいいだろう。
「え、でも......」
「まあまあ、いいから」
「山口くんがせっかく言ってくれてるんだし、行きましょお嬢様」
「そうそう、早く戻ってきてくれれば俺も沢山食べられるしね」
安芸さんは申し訳なさそうにしていたが、俺と姫芽さんの強い押しにより渋々言ってくれることになった。
「おまたせ」
「ごめんね、山口くん。もう行ってきていいよ!」
5分ほどしてお盆いっぱいにお皿を乗っけた安芸さんと姫芽さんが帰ってきた。
2人のお盆にはそれぞれパンケーキが数枚重なった皿や、色とりどりのケーキが少しずつ配置された皿なんかがあった。
さて、俺も取りに行くとするか。
ついたての角を曲がるとそこには様々な料理が広がっていた。
スイーツバイキングというのだからケーキやパフェなどしかないと思っていたが、意外にもスパゲティやうどんなどの腹持ちするものも置いてあった。
俺はそんなにお腹が空いているわけでもなかったので、スパゲティを少しとモンブランを1つ皿に乗せて座席に向けて足を反転させた。
「あれ、安芸さんじゃん」
「ほんとだー!あきさんもこんなところ来るんだね。話しかけてみよっか」
安芸さんたちのテーブルへと戻る途中、俺や安芸さんたちが来ているものと同じ紺色のブレザーを着た女子たちが安芸さんの方を見て話しているのが聞こえた。
おそらく同じ学校の人だろう。
会話の流れからして、俺が今から向かっているところが会話のネタになっている。
今ここで席に戻ったら逆効果だろうからここで立ち止まって話が逸れるのを待ってよう。
「安芸さん。こんにちは」
「え?ええ、こんにちは」
俺のそんな甘い考えは直ぐに破られ、女子生徒たちは安芸さんと姫芽さんが座るテーブルへと話しかけに行ってしまった。
「安芸さんもスイーツ好きなの?」
「ま、まあ好き、ですね」
「ところで、梨花ちゃんは?向こうのスペースでは見かけなかった気がするけど」
「いや、それは......」
安芸さんは困った質問をされたように言い詰まった。
最悪だ。
俺と安芸さんたちが一緒にいるところを見られなかったことは不幸中の幸いだが、こうなってしまったらバレるのも時間の問題だ。
安芸さんは来る前から俺との関係がバレることを全く警戒してなかったが、学校一優秀な彼女だ。
まさかなにも対策を考えてないなんてことは無いだろう。
「梨花ちゃんは今御手洗に行ってるよ」
「そっか。邪魔しちゃってごめんね。じゃあまたあとで」
そう言って女子2人組は自分たちの席へと戻って行った。
姫芽さんの機転の利いた言葉で何とかこの場は凌げたが、どの道あとで梨花さんがいない事がバレてしまうからなんか考えておかないとな。
「あ、山口くんおかえり。待たせちゃってごめんね」
「いや、大丈夫だよ。それよりまだ食べてなかったの?」
「うん。流石に荷物見てもらってた上で先に食べるのは悪いかなって。まあ、姫芽はずっと先に食べようって言ってたけどね」
「もう、お嬢様やめてくださいよ!」
安芸さんはくすっと笑いながらいただきますと手を合わせている。
姫芽さんは何回かスイーツバイキングに来たことがあるらしいし、本当にスイーツが好きで早く食べたかったのだろう。
待たせてしまって申し訳ないな。
安芸さんはこういうしっかり周りの人間に気を使えるところもよく出来てるなと思う。
さて、俺も食べるとするか。
「んー、美味しいね」
「ほんとに最高ですね」
2人とも本当に美味しそうにパフェをほおばっていた。
パフェを食べ終えたら、パンケーキを1枚ずつぱくぱくと食べて進めていく。
「あ、お嬢様口元にクリームがついてますよ。取っておきますね」
「あ、ありがとう。もう姫芽、外ではあんまりやらないでって行ったでしょ」
なんと姫芽さんは安芸さんのほっぺに着いたクリームを慣れた様子で舐めとった。
なんとも百合百合しい光景だ。見る人が見たら喜ぶ光景だろう。
梨花さんとのお風呂の件もあったが、安芸さんは使用人たちと本当に仲がいいんだな。
俺がやっとスパゲティを平らげたところで、彼女たちのお盆は空になっていた。
「じゃあ私たち2周目取ってくるね」
そう言って安芸さんたちは席を離れた。
俺は残りのモンブランでも食べて帰りを待ってよう。
「あれ、君なんでここいるの?ここって安芸さんの席じゃなかったっけ」
さっきの女子が不思議そうにこちらに向かってくる。最悪だ。
※※ ※※
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
「面白かった」「好き!続き読みたい!ねっ、いいでしょ」という方がいらっしゃいましたら、是非フォローをお願いします!
また、少しでも面白いと思ってくれた方は『☆☆☆』を『★★★』でレビューしてください!創作活動の原動力になります。
お前の作品まだまだだなと言う方も『★☆☆』としていただいても構わないので、是非評価お願いします!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます