-第15話-乱入
「なんでここにいるの?私らと同じ学校だと思うけど、君は安芸さんとどんなん関係なの?」
女子生徒の片方がすごい剣幕で詰め寄ってくる。
ここはなんとかして乗り越えないと、彼女を幸せにするどころかかえって不利益を被らせてしまう。
安芸さん、早く来て考えているであろう策で乗り越えてくれ。
「ねえ、聞いてる?」
「いや、なんというかごめん」
「いや、なんで謝ってんの。私の質問に答えてくれる?」
「それは......」
何か言わなければまずい状況だが、俺は言葉が詰まってしまう。
でも下手なことも言えないしここは俺が犠牲になってでも安芸さんの立場を守った方がいいのだろうか。
「じ、実は......」
「ただいまー!ってえ?2人とも知り合いだったの?」
「お嬢様、そんな風には見えないですよ。多分なんで山口くんなんかが私たちとここに来てるのかと気かけれてるんじゃないですか」
俺が言い訳を言いかけた時に、ちょうど安芸さんと姫芽さんが帰ってきた。
姫芽さんは直ぐに状況を察したようで、安芸さんに説明している。
彼女らが帰ってきてくれたからには多分何とかなるだろう。
「安芸さん、この男とはどういう関係なの?」
「彼は私をしあわ......」
「俺が親から貰った優待券持ってるからって誘ったんだ。ほら、安芸さん美人だからやっぱ男子なら出かけたいだろ?安芸さんは優しいから付き合ってくれてるだけだから、今日のことは気にしないでくれ」
安芸さんに喋らせてはダメだ。
本能でそう感じとったので、俺は苦し紛れの嘘で誤魔化そうとした。
よく考えれば令嬢の彼女がそんなスイーツバイキング1回分ごときで男と出かけるなんてことは無いが、まあその場のノリで何とかなるだろう。
「そうなんだ。なんかごめんね。今回限りの関係ってことなら干渉してごめんね。でも付き合ってたり、少しでも狙ってるのだとしたら考え直した方がいいよ」
「お、おう。全然そんなつもりは無いから大丈夫だ」
女子生徒はすこし申し訳なさそうな顔をしながらも、自分の主張だけは告げた。
彼女は意外にも早く納得してくれ、自分たちのシートへ戻って行った。
俺の予想では安芸さんがそんな現金な人ではないと分かっているから、もうちょい話が拗れると思っていただけに今回の結果には驚いた。
彼女のことはそんなに興味は無いが、友人間での会話のネタのために安芸さんに男がいたら面白そうだと思ったから絡んできたみたいなところだろうか。
だとしたら本当に有名税って大変だな。
「なんか庇ってもらっちゃったみたいでごめんね」
「俺としても安芸さんに明日からも幸せに過ごして欲しいから、変な噂は立てたくないからね」
「山口くん、意外とかっこよかったよ!姫芽感激!!」
「はは、ありがとう。まああと30分以上残ってるし、今はスイーツバイキングを楽しもうか」
「そうだね!んー、このケーキ美味しい」
安芸さんはケーキを頬張りながら返事していた。
思えば普段あんなに凛としてる彼女からは、こんなに甘い表情で甘いものを食べているところは全く想像できない。
俺はとても貴重なシーンを目撃しているんだな。
まあ色々あったけど、この笑顔が見られるなら安芸さんからのお願い受けて良かったな。
そのまま安芸さんと姫芽さんは追加でもう1回食事を取りに行ってラストスパートを掛けていた。
最終的に机の上にはお盆が3枚ずつ、お皿は各10枚以上積み上がっていた。
「よし、じゃあ時間だし帰ろっか」
「んー、食べた食べた。姫芽もう食べられないなー」
ちょうど時間になったということで俺たちはそれぞれ荷物を持って席を立った。
「はい、3000円」
俺は流石に女子2人合わせて3人分は高校生の金銭事情的に奢れないので、割り勘の自分の分を支払いをしてくれるらしい安芸さんに手渡そうとした。
「お金は大丈夫だよ。今日はたっぷり楽しませてもらったしね」
「でも、悪いよ」
「まあまあ、元はと言えば私からのお願いだしね」
そう言って彼女は俺にお札を返し、レジへと向かっていった。
さすがは令嬢だ。
きっとブラックカードとかで一括で会計しているんだろう。
「おまたせ」
「わざわざ払ってもらっちゃってありがとね」
「姫芽の分まで出してもらっちゃてありがとうございます」
彼女はいつもの凛とした顔で帰ってきた。
俺たちはそれぞれ感謝の意を伝え、短いようで色々とあった60分間を過ごしたスイーツバイキングを後にした。
※※ ※※
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