-第10話-告白そして
そのまま何事もなく平常通りの座学の4限が終わり、昼食の時間となった。
俺は一目散にいつものぼっちスポットの屋上のところの階段へと向かうべく人の波を割って進んだ。
長い廊下を進み階段を登っていく。
この道も昨日は女の子と一緒に通ったのだが、今日は隣に梨花さんなんて居るわけなくいつも通り1人だ。
俺が安芸さんや梨花さんみたいな美少女と出会ったこと自体が異常なんだよな。
俺はこうやって昼休みも1人で行動し、弁当を食べるのが運命なんだろう。
階段を10段ほど登ったところで立ち止まった。
声が聞こえる。それも男女の声だ。
こんな時間にこんな誰にも見つからないところで話しているなんて、かつあげかカップルか告白くらいだろう。
「突然呼び出してしまってごめんね」
「うん。それでなにかな?」
よく耳を澄ませてみると、これは安芸さんの声ではないか。
安芸さんはかつあげにも会わないだろうし、彼氏がいるという噂も聞かないし、学校一の美少女で令嬢な彼女が呼び出される理由は10中8、9告白だろう。
しかし彼女はまるでこの先の展開が読めているかのように、突然呼び出されたのにも関わらず落ち着いている。
「まあ、なんというか。好きです。付き合ってください」
「ごめんなさい」
彼は恥ずかしいのか一息置いてから必死に想いを伝えたが、安芸さんは考えることすらせず一蹴した。
彼女は少し申し訳なさそうにあははと作り笑いをしているが、返事は即答で変わらないようだ。
「そっか。理由だけでも教えてくれないかな?」
一瞬で断られたことが気に障ったのか告白した男子はすこし気を立てている。自分と彼女で釣り合っていると思っているようで、断られたことが納得できないためかそう問い詰めていた。
告白すること自体は自由だと思うけど、変に迫るのはかえって迷惑になると思うのに理解できないのだろうか。
そんなことも理解できないから振られるのでは無いのか。まあ俺には色恋沙汰なんて関係の無い話だからどうでもいいが。
俺は彼らの話が長くなりそうだから定席で昼食を取るのを断念して、ご飯を食べるために教室に戻るのだった。
本当に久しぶりに教室で昼食を取っている。
さっきは告白現場を目撃してしまい、気まづくなって戻ってきた訳だがあの告白していた男子と安芸さんですら釣り合わないわけだから、こんなぼっち陰キャの俺と彼女彼女では住んでいる世界が違うことに気づけた。
そんな彼女からの期待に応えるためには一刻も早く幸せの形を見つけなければならない。
そう思いながら今日動くためのパートナーを摂取すべく、弁当箱のフタを開けると中には唐揚げや大根の煮物、卵焼きと色とりどりのものが入っていた。
うちのお母さんが作っただけあってとても鼻腔をすすられる。
俺はお箸で卵焼きをつかみながら辺りを見渡した。
友達同士で固まって喋りながら時折ご飯をつまんでいる陽キャたちや机を囲んで弁当を食べている人達が大半を占めていた。
だけど隣の席の林さんだけは違っていた。
大きなお弁当箱を3段重ねたものを持参してきており、それらには全て手料理が詰め込まれていく。とても美味しそうだが、彼女はそれらを味わいつつも1段、また一段と次々に早々とおかずを平らげていく。
彼女はいつもの授業中の気だるげな曇った表情とは程遠い本当に幸せそうな顔つきでお箸を進めている。
やがてあれだけあった弁当箱も空になり彼女はまた眠たそうな表情に戻り、友人たちの元へと向かっていった。
そんな彼女を見ている間はあまりに幸せそうだったので心を奪われてしまいそうになったが、彼女を見送ってから俺は弁当を急いで腹に満たさせた。
5限も終わりもうすぐ6限に入るところで隣の席をふと見てみると林さんは熟睡していた。
身長は女子の中では普通くらい、勉強運動も俺と同じようにあまり得意な訳ではなくいつもどこかやる気がなさそうな表情をしている。
そんな彼女も昼休みはあんなに幸せそうな顔をしていた。
食にはそれほどの魔法と力があるのだろう。
俺も肉体労働後に食べるコンビニのホットスナックは本当に美味しいといつも感じている。
そうか、安芸さんもご飯を食べれば幸せになるのかもしれないな。
安直な発想だがなんのアイディアも浮かんでいない今の俺にとってそのアイディアだけでも十分収穫と言えた。
ご飯に誘うとなると高級料理亭なんかは彼女は多分行けると思うが俺は絶対に金銭的に無理だ。
かといってファミレスでは特に幸福感を感じられる気がしないし、無難にお互い食べたことが無さそうな新オープンのお店にでも行ってみよう。
そういえば今日行きの電車の中で駅前のスイーツバイキングがオープンすると電子広告が打ってあった気がする。
あの広告を見ながらうちの生徒と思われる女子たちが「今度絶対行こうね」と口約束して騒いでいたのでとても印象に残っている。
食べ物であり女子に人気なスイーツであれば安芸さんも喜んでくれるだろう。
彼女を早速誘ってみようと思ったが、さっき授業中にRINEしてすぐ返信が返ってきてしまったので彼女の授業の邪魔をしないように放課後に誘ってみることにした。
※※ ※※
ここまで読んでいただきたいありがとうございました!
今回で導入部分は終了となります!
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