⑧昨日、秋を感じた


 毎年、秋を感じる瞬間がある。


 そう感じる大きな要因は温度と湿度だと思っている。ジメジメしてた空気がひやりとして、さらに乾いている。一番早くそのことに気づく器官は鼻だと私は思っている。鼻先で温度、鼻孔に吸い込んだ外気で湿度を……つまり、外出をするためにドアを開け、外気に鼻に触れた時、「あ、秋が来たな」と気取るのだ。


 それはその年の最も活発時期が過ぎたという寂しさと、去年もこんなどこか名残惜しいような心境になったなと、物思いに耽り過去に思いを馳せる瞬間である。


 少し胸が締め付けられるが、そんなささやかな感傷を私は秋の風物詩だと思っている。

 実りの秋に至るまでには夢中で生きて、その過程で得たものも失ったものもある。そしてそれが結実し、成果となる。


 だからやっぱり得たとしても失ったとしても、やっぱり無意味なものはないんだなと思う。


 だからせめて過ぎ去るものに誠意と敬意を払うことにする……世情はコロナでも秋は来るし、花は咲くし、実りもする。その事実に私個人的は一番励まされる。



 2021年9月8日 紡


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