エピローグ

「貴方、どこへ行ってらしたの?」

丘を越えて息を弾ませてルウムが来る。

ぜいぜいと肩を震わせ僕を心配そうに見やる。

「まるで魂が抜けたみたい」

僕はかぶりを振る。そしてどうにか笑顔を作った。

「そりゃ、お母さんの退院が決まったからさ。精密検査で父の癌も縮小してる」

つづいて娘達が駆け上がってきた。

「パパったら、おばあちゃんのことになったら一目散なんだから」

「お婆さんがいなけりゃお前達も生まれなかったんだぞ」

僕は少し怒ったふりをする。

「パパ、嫌-い」

末娘がルウムに泣きついた。

これだから、女は…いやいや、家族なんだから濃いも酸いも噛分けよう。

「パパは嫌いじゃないぞーぅ」

僕は娘達を追いかける。

我が家の二元論は多頭飼いだ。好きも嫌いもあるもんか。

「みんな大好きだー」

「「きらーい」」

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仰臥兵ブルース 水原麻以 @maimizuhara

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