ルウム―LOOM 来るべきもの
星の長饒舌は絶好調に達した。ふぞろいな光の粒が縦横無尽に虹色の尾をひきながら飛び交う。それらはゆっくりと漂って地面に降り積もる。想像してほしい。銀世界に油膜を踏みしだく時の波紋が広がるさまを。いつの間にか時刻は昼夜を超越している。真っ白な全てをガサ、ガサとかき分ける。その音だけが明確だ。隠された変革のただなかで僕はひとり――。
「ずいぶんと老けたわね」
富士額の女が上から目線を投げる。濃緑な髪を肩に垂らして貫頭衣を腰紐で縛っている。
「君が…神なのか?」
言わずとも僕は彼女と顔見知りだった。学習机の女神。それがなぜ今ここにいるのか、僕はわかっている。ただ現実と向き合う勇気が欲しい。
「生命播種計画だの軍部だの神々の残骸だのはゲートよ。私はいつもそこかしこにいる
」
彼女がチラ見するとゲレンデに大小さまざまな分身が浮上した。群体をつくり、銀の砂漠をゆっくり横断する。
僕は見よう見まねで視線を走らせた。シュッと横移動する。なんとミニチュアサイズの僕が小走りで駆け抜ける。
「不詳の二元論が姿形を変えて宇宙各地を転戦し延長戦を続けている。そんな話、聞き飽きたからな」
僕はガバっと身を起こした。すると彼女は物凄い勢いで僕を制した。
「ウンザリしてるならなおさらよ。そろそろ自分の立場を思い出して」
彼女は今度こそ決着をつけろという。僕の真横にどす黒い渦が出来た。
わかった。向き合おう。
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