もうすぐ奴らが殺しに来る
夜半に雨が少しぱらついた。そしてすぐ満天が晴れ、風が大輪のかぐわしさを運んできた。死ぬことは入隊時の即席訓練を含めて何度も体験している。だが実際に待つとなれば話は別だ。考えるだけで胸が高鳴り脂汗が背筋を伝う。
「死とは忘却だ。無感覚だ。君にぴったりじゃないか」
悪魔は艦長を真似た。本当に意地汚い奴だ。
「まぁいいや。どのみち弱者連合が僕を殺しに来る」
不可避な運命を自分にいい聞かせる。それでさらに現実味を帯びる。
「君は死で妻に対する偽りを償おうとしている」
「安っぽい洞察ですね。違いますよ」
僕は悪魔の浅薄を嗤った。勿論、表層的な理由の一つではある。本心は因数分解不能なほど複雑だ。僕に付き添っている家庭教師的な女神の正体を知りたい気持ちもある。重苦しい何かが心に蓋をしている。
「では方法を変えよう。私は周知の通り、播種端末の部品だ。アポトーシス担当と言ゃわかるだろう」
なるほど、実に判り易い。
「友邦が悪の華を咲かせると言いましたね?ビッグバンを…」
「ああ、端末の存在じたいが悪の権化なのだよ。茫漠たる星界に栄枯盛衰の理を普及させる事ほどの巨悪はないと思わないか」
「確かに傲慢です。何もないならそっとしておいてほしい」
「その罪を敢えて私を製造した者は犯したのだ」
僕は唖然とした。ナンセンスだ。
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