とばりのきらめき

夜が更けてきた。既に第一の月は降下している。悪魔の暴露を脳裏で反芻していると中天に閃光が連なった。二つ、三つ。弱者連合は起死回生の機会に望みを託したようだ。艦隊前列の斥候艦だろう。ぱあっと手のひらサイズの火球が膨らむ。間髪を入れず夜空に長い長い五線譜が描かれた。ブースターを吹かして強行突破する小隊から囮が分離する。くんずほぐれつの空中戦は音符を象って消える。弱者連合のエースパイロットがどれだけ命を落としたのか。彼らのそれぞれに護るべき人やものがあるのだろう。

詳細な悲劇は距離が隠している。僕には窺い知れない終幕だ、戦争は腹が減る。安全地帯から見物するだけでも無意識に血沸き肉躍るのだろう。猛烈に食欲がわく。僕は糧食を食んでいた。遅かった。僕にできることはただただ弱者連合の必勝祈願だ。口いっぱいにコリアンダーの香が広がる。


はっきりいって農奴はおいしくない。

とどのつまりあいつの主張は陳腐な二元論だ。星系政府は強烈な搾取を平穏無事で覆い隠している。原罪とはよく言ったものだ。人間の欲望は際限ない。文化的生活というバブルは簒奪を吸引熱とする理想気体としてふるまう。インプットは人類の場合ありとあらゆる理由づけされた搾取対象だ。そしてあいつは盛んに僕の背中を押すのだ。ベールを剥いで奪い返せ、と。

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