カルーアミルクは背徳の味
冷蔵庫から飲みかけの調整乳を出す。風呂上がりの一気飲みは人生の至福だ。だがコーヒー豆を醸造したリキュールを混ぜてアルコール度数を高める。カルーアミルクはオーレじゃないが未成年が隠れて飲む。甘くまろやかで喉が火照る。背徳の味だ。山門は封印を解いた。メモリカードの隠しフォルダ。それを推敲支援ツールと称して希望者に配った。ブックマーク数一桁に喘ぐ底辺作家達は感涙した。文章が見違えるほど整った。もっとも彼らの拘りが流用を拒んだが。
それは山門にとって表層でしかない。マルウェア・カルーアは使用者の書きかけ原稿を漁り個別に遷移確率を計算し新作を自動生成する。
「単に書くだけでは読まれない。閲覧ログと傑作の間には相関関係がある筈だ。カルーアは底辺作家達の不人気理由を徹底解析し反面教師とする。そして『読まれる』作品に回帰させるのだ」
松戸菜園は早朝までかかって非テンプレ作品の怒涛を見届けた。明けて通勤時間帯、ノベリティの熱心な読者が車中の暇つぶしに豊作を読み漁る。
サーバーが扱う情報量は臨界を超えるだろう。
「カルーアがノベリティのサーバーを遮断し情報空間から放逐する。その時が
最高の人生だ」
ブラックホールは模擬的な事象とはいえ予測不可能な情報爆縮を起動するだろう。山門はその瞬間をログインしたまま見届けるつもりだ。
画面隅のデジタル表示は6:17。遅い始発が動き出す。
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