第10話

間違いない。

僕は、夢から覚めていない。

まだ、夢の中にいる。


僕が本来住んでいるのは、2021年の5月だ。


ここにいる声優さんは、もう鬼籍に入られた方ばかりだ。


「ようやく気が付きました?」

「福原くん?」

「ええ。ここはまだ、先生・・・いや、君の夢の中だよ」

「・・・そっか・・・」

「いやに冷静だね・・・」

「そりゃあね・・・」


そう。

僕は漫画家を夢見ていた。

しかし、才能に限界を感じていた。


しかし、あきらめきれなかった。

その甲斐あり、少しだけ現実の物と出来た。


今、夢の中の時間は止まっている。


「どうする?竜ちゃん。目覚める?」

福原さんが、声をかける。

竜ちゃんというのは、僕のペンネームだ。


福原さんは、僕がファンにしている声優さん。

ラジオを通じて、自分の事を覚えてもらった。


これも、明晰夢のひとつなのか?


「いや、ついでだから、声優さんに挨拶していく」

「そうだね。もう現実では会えないし、少しだけならいいよ」

「ありがとうございます」


僕は声優さんに、挨拶をしてまわった。

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