第6話

教室に戻る。


案の定、僕に興味を示す人はいない。

まあ、それでいいと、当時は思ってた。


向こうで、女子がたむろってるな。

アイドルの話に華を咲かせている。


このころは、光ゲンジが人気が出だしたんだな。

女子の間では・・・


まあ、これは夢だ。

女子に声をかけてみよう。


名前は知らんが・・・


「あのう・・・ちょっといいですか?」

女子が不思議そうに、僕を見る。


「珍しいね。君が女の子に声をかけるなんて」

この子は誰だっけ?

他の子たちも、名前が出てこない。


ノートに目が行くと、米田早苗と書かれていた。

卒業後は、声優の専門学校に行ったんだな。


デビューは出来なかったみたいだが・・・


「で、どうしたの?何かよう?」

「ブレザーのぼたんが取れてしまって、裁縫道具貸してくれたら、ありがたいんですが・・・」

女子は、僕のブレザーを見る。


「そんなの、私が縫ってあげる。貸して」

「いいんですか?」

「うん。後、同級生なんだから敬語はいいよ」


僕はブレザーを渡す。

簡単に縫い終わった。


「はい。山村くん」

「ありがとう」

「どういたしました」

「器用だね」

「女のたしなみよ」


そんなものですかね・・・


「でも、どうして私に頼んだの?」

誰でもよかったとは、夢とはいえ言えない。


「一番、女子力あるみたいだから」

「女子力?」

「いや、得意そうだったから」

「そう?ありがとう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る