トップクランリーダー、またの名を変態痴女
俺たちが今登録したこのポータルには、ファストトラベル装置という役割の他に、もう一つ大事な機能がある。
それが『リスポーンポイント』。死んだときに蘇る地点になっていることだ。
死に戻った場合、事前に設定されているポータルがあればそちらにリスポーンし、それがなければ最後に利用したポータルにリスポーンする。
俺たちの場合はマイハウスのポータルに設定しているから、もし死んだらエストールのマイハウスに復活するわけだ。
だから、目の前にいきなり強面の傭兵風のプレイヤーがスポーンしたとしても驚きこそすれ珍しいことじゃない。
だがそれは、三~四人くらいが復活するようなときの話であって、何十人もの傭兵が次々とスポーンしてくる場合には適応されないんだ。
「おいおい、こりゃどういうことだ……?」
俺は目の前の光景に驚いていた。
この傭兵プレイヤー達のことは知っている。というかわりと見知った顔がちらほらいる。
だがそれだけに、目の前の事態が以上だということが理解できていた。
「『
「トップクランがこんな一気に死に戻るなんて……レイド戦でもなきゃ見れないね」
ガオウとセイリが次々とリポップしてくるプレイヤーを見て呟いた。
この荒くれ傭兵っぽいプレイヤーは、トップクラン『
『
クランメンバーはあらくれ傭兵のロールプレイヤーで固められており、最前線で暴れてばかりの無法者を彷彿とさせる集団だ。
見た目に反してメンバー全員ロールプレイを止めると礼儀正しいから民度が良いってのがギャグなんだけどな。
だがロールプレイヤーの集まりとて高い実力を持っているのは間違いない。なにせこの隆没の巨台地を開拓し、地下に存在していたへクセンシルムを発見して広めたのは他でもない
だからこそ、様子が際立っている。
「最前線を開拓できるコイツらが、さらに言えば他のプレイヤーよりも先んじて隆没の巨台地を開拓していた
「地形ギミックにでも巻き込まれた……なんて感じじゃなかったよね?」
「何かに負けたって言ってたからねぇ……」
トップクランが集まってていても負けるモンスター、か。
「もう聞いてみようぜ、こんだけメンバーがいるんならどうせいるんだろ? あの武器オタがよ」
ガオウがそう言った時だった。
「チッッックショウ!! なんだァあの理不尽攻撃はァ!!」
雷が落ちるような怒号がすぐ近くから響き渡った。
「レベル140越えたオレでも即死とか頭おかしいんじゃねェのか!?」
苛立たしげに地面を殴り砕き、街中に響くんじゃないかと思うほどの怒声をあげる一人のプレイヤー。あんまり関わりたくないようなセリフを吐くが、悲しいことに件の探し人だ。
「あ、いた」
「よォー武器オタ。こっぴどくやられたみてェじゃねえか」
「アァン!? ……って、ユーガたちじゃねェか。 テメェら来たのかよ」
ドスのきいた声でヤンキーばりにガンを飛ばしてくるこの女が、攻略組と呼ばれるほどのトップクラン
ついこの前150まで解放されたばかりのレベルキャップを既に140台まで上げた数少ないプレイヤーの一人。ログイン時間一日二十時間と噂されるのはまさしく廃人だ。
おまけにコイツは極度の武器オタ。俺が銃を愛するオタクならば、しぐみりあはあらゆる武器を愛し使いこなすオタクだ。
いくつもの武器を使い込んで戦い、卓越した戦闘センスで鬼のように暴れ回る。銃まで使うから、俺が特別製の銃を作ったこともある。
俺とソーナは変態
しぐみりあの場合は、別の意味でも変態と呼んでも良いと思うが。
「相変わらずゲームだからってなんつー格好を……」
一言で言えば、ボンテージ。ズボンはぴっちりとした素材だし上半身はその特大の胸しか隠せていないし、ベルトみたいなのが巻き付いているだけで傷跡だらけの体を惜しげも無く晒している……痴女と言われても仕方ないくらいの格好だ。
ゲームだからと、しぐみりあは現実ではとてもできない格好の装備を多用する。
いくらレベルが高くたってそれじゃ防御力もなにもないだろ。
彼女持ちの目のやり場が無いのがつらい。
「おーなんだ? 色気ムンムンなおねえさんの姿を直視できねぇってか?」
「色気の欠片もねぇ奴が何言ってんだ。目のやり場くらい用意しとけって言ってんだよバカ」
「ケンカ売ってンのか? 言い値で買うぞオラァ!」
「ちょっとしぐみりあさーん? 人の彼氏の前でそんなおっきいの揺らさないでよ!」
にやけながら自分の胸を見せつけるように揉みしだいてきたしぐみりあの姿を隠すように、ソーナが俺の目を塞ぐ。首がぐりんってなった、ちょっと乱暴だな……。
「だいたいしぐみりあさんのはデカすぎなんだって!」
「そりゃゲームなんだからおっぱいデカくするだろ! おっぱいだぞおっぱい!」
「連呼するな! 女の子ならそれを隠せってこと!」
ふしゃー、とソーナが威嚇するのがかわいい。
この女っぽさの欠片も無いような女だが、驚いたことにガワだけじゃなく中身も女らしい。これでネカマじゃないって知ったときは驚いたもんだ。
「んで? なんで
いつまで立っても進まない話にじれったくなったのか、ガオウがそれを聞いた。
「チッ、仕方ねえだろ。情報も無しに新しいフィールドボスと戦ってみたんだからよ」
「台地のフィールドボス? 見つけたのか!」
「おう、探索中に偶然な。強そうなのがいたからよ、《鑑定》かけてみりゃフィールドボスだった。メンバーも揃ってたんでいっちょ試しにやってみたンだが……」
「天下の傭兵団でも、初見じゃ厳しいってことかな」
「悔しいことにな。オレがいながら情けねぇ」
セイリの言葉にガリガリと白い頭を掻くしぐみりあだったが、ふと思い出したように俺へと視線を向ける。
「そういやお前が好きそうな奴だったぜ? ユーガ」
「俺が?」
「ああ、なんせ――」
口角がつり上がった獰猛な笑み。それがコイツのデフォルトの笑顔。
それを浮かべて、歪んだ口からその言葉を吐いた。
「機械の龍だったからなァ」
今まで確認されていなかった、機械龍の存在を。
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