目標は年収1000万円

 小説の書き方の話でよく言われるのが、いわゆる「プロット」だと思う。プロットは物語の骨組みというか、設計図というか、まあそういう感じ。

 学校の授業でももちろん、プロットを作るように言われた。かなり細かく書き込むように(誰がこの場面で何を言ったとか、それぐらいまで)。

 小説の書き手はよくプロットを作る人と作らない人で分かれると思うけど、やっぱり可能であれば作ったほうがいいと思う。多くの先人たちがそのほうが良いと言っているのだから、作ることに何かしらの利点はあるはずだ。

 ただ僕は基本、プロットは作らない。なぜなら、プロットを作ろうと思っても一生プロットが完成しない、つまり一生小説を書き始めることができないからだ。

 僕は実際に小説を書いてみないと、物語が湧いてこない。逆に言えば、とりあえず物語を書き始めてみると、それに付随したエピソードが湧いてきたりする。

 僕はプロットは作らないけど、その作品のコンセプトというか、方向性は書き始める前にしっかり考えておく。僕がカクヨムコンに応募した『殺戮のダークファイア』を例に出すと、これは「荒廃したような暗い世界観」「かなりハードな出来事が起こる物語」というようなことは常に念頭に置いて書いていた。こういうことを言うのはあれですが、「人が死んでいく話」を書こうとは思っていました。

 作品のこういう方向性が曖昧だと、読むほうも何を読んでいるのかわからないと思うし、自分も何を書いているのかわからなくなって途中で投げ出してしまうようになると思う。だから、どんな感じの作品なのかはよく考えておいたほうがいいと思う。僕は『殺戮のダークファイア』の1話目で、主人公にいきなり人の顔面を真っ二つにする寸前のところまで行わせた。この1話目で、作品の方向性がだいぶわかったはずだと思う。

 まあこういったことは、長年一人でひたすらに試行錯誤を繰り返してようやく気づけたことであるし、結局やり方は人それぞれ、自分に合った方法でやればいいということですね。


 専門学校2年目になって、二人ぐらい講師が入れ替わった。新しい先生の中で、少し偏屈な変わったおじさんがいた。ある意味、この人が一番小説家っぽい空気感を持っている。芸術家気質、といった感じですね。

 その偏屈な先生の授業で、ある日生徒からの質問タイムになった。生徒からの質問に先生が答えていく。

 その質問タイムで、僕は先生にこういう質問をした。


「小説家で年収1000万円稼ぐには、どうしたらいいですか?」


 いつものように、僕の発言でクラスがどよめいた。だけど僕はべつに妙なことを言ったつもりはない。

 他の人は漠然と小説家になりたかったりするのかもしれないが、僕は小説家はあくまで仕事として捉えていて、そして具体的な目標があった。


「1000万円? どうして?」

 と先生が尋ねてくる。

「なんとなく。目標なんですよね」

 僕は答えた。

 1000万という数字に、とくに大きな意味はない。単純に区切りがいいから。僕は物欲がまったくといっていいほど無い人間なので、欲しいものがあるわけではない。ただ自分にそれぐらい稼ぐ能力があるということを、世間に示したかった。それは自分の自己顕示欲を満たすための数字である。


「1000万円は、小説家としてはべつに多くも少なくもないね」

 先生は答えた。

「1000万円なら、小説を二つ書くことかな。もちろん、初めにそういう仕事の依頼があって、メディアミックスなどもされたらだけどね」

 先生は確かそのようなことを言った気がする。まあ結構前の話なので、今はまた状況が違うだろうけど。


 まあどうやって1000万円を稼ぐにしろ、まずは作品を世に出さないと始まらない。

 だから僕は今日もこうやって机に向かい、ネットゲームに勤しんでいるのであった(小説書け!)。

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