乱闘

「聞き捨てならねえな」

「黙ってりゃ好き放題」

剣士達が乱入してきた。脇差から木刀を抜く。禍々しい蛇の呪符が刃を這っている。当たれば目から火が出そうだ。

志の低さを令嬢が嗤っているとテーブルが転覆した。

やおら閉太は立ち上がり腕で烏骨鶏の型を組む。つむじ風がチェルシアのスカートを巻き上げる。純白の三段フリルが眩い。

「中書島流が何だって?」

ひょろ長い二年生が見下した。予選リーグ同時一位通過の宇月だ。閉太と互角に戦った。だが彼は挑発に応じない。

「その棒きれは我流か? 基本術を小手先だけ弄って魔改造でございってか?」

煽られて卯月が蛇を唸らせる。血のような舌が虚空を舐め回す。

「俺達はひと味違うぜ。ただ教科書をなぞる連中と違って応用を工夫してるんだ。そういう努力しない連中をぶっ倒してナンバーワンになってやる」

するとチェルシアが抗戦した。

「できるわけないじゃん。貴方たち授業をサボって」

「お前らこそ目を覚ませ」

宇月は現状認識を呼びかけた。学校で習う基礎だけで頭角を現す事は不可能だ。

「それカナヘビの亜流だよなあ? 真白師範の術をほんの少し弄って猛らせてる」

閉太はヒョウと口笛を吹いて手招きした。

「独学っていいながら基本に忠実じゃん」

令嬢がダメ押しすると宇月がみるみる真っ赤になった。

「ぃやっかましい!」

次の瞬間。剣と素手が切り結んだ。

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