モニカの内緒話
昨夕の出来事でございます。お嬢様がいつものように学校から帰るなり大急ぎでお召し変えされまして公立体育館にお出かけあそばされたのです。何でも女子庭球部の御前試合が近いらしく辺境領に行幸なさる国王の前で恥はかけぬと励んでおられます。砂だらけのドレスを洗うのは一苦労ですがチェルシア様の弾けるような笑顔に癒されるのです。
スカートをもみ洗いしておりましたところポケットから紺色の液体がにじみ出てきました。純白の生地が染まっては大変と直ちに改めましたところ四つ折りの紙片が濡れておりました。あわてんぼうなお嬢様のことですからお館様宛ての書類かと思いまして急いで干しました。
すると、するとでございます。
なんとびっくり。中書島閉太様宛の手紙ではないですか。それもお嬢様らしい丸っこい字体で綴られております。他人様の親書を盗み読むなど侍女にあるまじき破廉恥でございますが干してあるものはどうしても視界に入ります。内容は中書島様が主人公として活躍なさる物語でした。こうした書き物を勉強の合間に綴る習慣は私めも勘づいておりました。チェルシア様が本の虫になられたのも小説執筆のカムフラージュだったのです。お嬢様もお年頃。私めも多感な乙女でございましたからお気持ちは理解できます。若気の至りと申しましょうか思い人のあれやこれやを御伽話にしたためるのです。
念のため確認しましたところ引出しの肌着の段からチェルシア様宛の恋物語を発見しました。
あらあら、まあ。これはどうしたものでしょう。
お館様に相談すべきか見なかったことにすればよろしいのでしょうか。
モニカは迷っております。
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