第16話 女子同士の戦いは醜くも美しい 2

「理由はわかったわ。銀河がモテモテになったのは、あなた達のせいね!?」

「いや、宿主がモテるのは、もともとのようだが……?」

 アキトは美也子の問いに、首を横に振りました。

 それがあまりにもはっきりしていたので、美也子はさらにムキになって問いかけます。

「……あのね。そもそもあんた達が宿らなければ、銀河はモテモテにならなかったと思うんんですけど!?」

「そんなに力説して、さてはこの宿主のことが好きなのかな? ハニー?」

「そそそそんなわけないわよっ!!」

「図星のようだね? 顔を真赤にしたところからして。ハニー」

「ハニーハニーって、私は蜂蜜じゃなーいー!!  ミツバチじゃなーいー!!」

 美也子は、腕を何度も縦に振りました。

 アキトは、それを見てははは、と笑いました。

 美也子はさらに声の大きさを上げます。リビングのガラスが震えたとも思えるほどに。

「そ・れ・に! とっとと早く銀河の体から出ていきなさいよ!」

「ご生憎様。私はこの体が気に入っている。それに、地球人の体で活動するのが、地球で活動するには一番適しているのでね。あるいは、君と戯れるのにも適しているから、と言った方が正しいかな?」

「そ、そんなこと言っても無駄だからね!?」

「ほら。顔がもっと赤くなっているぞ?」

「じ、冗談じゃないわよ!!」

「ははっ、美也子君は本当に可愛いなあ」

 アキトが美也子をいじって遊んでいた時。

 本来の肉体の持ち主である、銀河といえば、頭のなかで、「見聞き」していました。

 見聞きしている、といえば、聞こえはいいのですが。

 見えるものは見え、聞けるものは聞け、感じるものは感じるのに。

 しゃべることもできず、動くこともできない。

 まるで、金縛りにあったかのような。

 まるで、体という薄い壁を一枚隔てた、牢屋の中にいるような。

 そんな感覚で、すべてを見聞きしていました。

 銀河はあの日から、答えを探していました。

 頭のなかにいる、アキトが何者なのかを。

 彼は事あることに、アキトに話しかけたりしていました。

 けれども、アキトは自分の正体に関して、決して答えようとしなかったのです。

 しかし、これですべてがはっきりしました。

(そういうことだったのか……。僕の中には異星人の皇子様がいたのか……。それがアキトで、他の人格もアキトの一部と……。なるほど、これで合点がいったぞ。でも、なんで僕に……)

 銀河がそう思った、その時でした。


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