文学警察

事態悪化

「まとめられてるってぇ？」

思わぬ方向から反撃が来た。作品の感想欄にURLが書きこまれた。恐る恐る開いてみると罵詈雑言がびっしり並んでいる。いわゆるまとめサイトだ。WEBサイトを主観的に切り取って好き放題に注釈をつけられる。ポイズンの名義で柿沼作品が滅多切りされていた。そして最後に「貴方ならこれを玄関に貼れるか」と問いかける。

対するコメント欄も辛辣だ。ツマラナイの大合唱そして柿沼の傲慢不遜に怒っている。

「嫌なら見なければいいじゃないか」

言おうとしたが既に反論が書かれている。時間を奪われた。人生の貴重な瞬間を台無しにされたという。

さらにこうある。

世の中にタダという概念は存在しない。等価交換だ。何かを得ればかけがえのない何かを失う。作者は無料の読物を提供していい気になっているだろうが読者も無償で読んでやっている。それなのに感想を受け付けて「乞食る」とは何事か。作者には読者に報いる相応の努力義務がある、とまで言う。

「どんな理屈だよ」

柿沼は画面を閉じようとした。匿名のURL転載者こそ相手の執筆時間を奪ってるじゃないか。

ブラウザを閉じかけて思いとどまる。SNSに比べてまとめサイトは悪質だ。放置しておくと悪印象がどんどん拡散して定着する。作家デビューするつもりは毛頭ないが万が一という事もある。

「放置できない」

問い合わせフォームから通報した。