VS 文学警察
人はあまりに凄惨な事件に出逢うと理解と感情がオーバフローする。それを非日常の出来事として処理する。柿沼にとってSNSの炎上は対岸の火事だ。
だが傍観者でいられなくなる日が来た。ついに文学警察が現れた。
スマートフォンに通知があった。購入時にショップ店員からアプリの導入方法を習った際にお試しで登録したアカウントだ。不問な議論より執筆に時間を費やす性格ゆえに放置していた。運営から生存確認を促されて半年に一度はログインする程度だった。見知らぬフォロワーが増える一方でフォロー数は0だ。
SNSの炎上はもっぱらニュースサイトの野次馬記事で知りパソコンのブラウザでROMする。
「リプライが1件、なんだろう?」
怪しい。呟く用件なんて殆どない。更新告知も投稿サイトで事足りる。最後に呟いた内容は何だろう。履歴を辿って苦笑した。
”いつか誰かに読まれたい。見て聴いて感じた気持ちを共有したい”
ブックマーク一桁台で低迷するWEB書きの気持ちだ。正直言って少ない感想や評価点に縋った所で何になろう。承認欲求だけで書き続けるのはしんどい。柿沼は総合ランキング評価で自分の立ち位置を確認すると「書き専」になった。評価の多寡には目もくれずただただ己の胸中を一心不乱につづった。書いては完結し評価を省みずまた新作に取り掛かる。短編の投稿数が十本を超えると評価通知の着信もいちいちどの作品に対してだか思い出せなくなる。
「ああ、5点も入ったのか」と懐かしむ程度だ。
だが今回は違った。
”お前の書いている作品は自宅玄関に堂々と張り出せる内容か?”
「おおおおおおおお!」
リプライ通知の要約に柿沼は言い知れぬ恐怖を覚えた。
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