北極海某所。聖ニコラウス拠点
概念的な場所は北極海。物理的には不可知な場所に拠点がある。
そんな要員が珍しく倉庫に集合している。指揮系統も支配者も不明だ。ベテランが十数名単位の小隊を便宜的に統率している。それも随時でなくリーダーもまちまちだ。最近では撫子のチームを英国人のアランが纏めている。
「全く厄介な病気だ」
前例のない困難が要員達の阻んでいる。空調は暖炉を置換したが進入路が煙突からダクトに変わっただけだ。だが感染予防対策は一方通行だ。外部の侵入を思想的に許さない。要員達は生身でなく概念として屋内に侵入する。これまでは形而上的な隙があればよかった。今回はそれが格段に乏しい。
「三密回避と言う奴ですか。それなら換気に乗じて」
中年の要員をアランが制した。「いや社会的距離や感染経路の問題だ」
それを克服してまで届ける必要があるのか、と咲奈が疑問視した。
途端にアランが卒倒した。要員数名が慌てて抱え起こす。
「使命は絶対だとさ…おおイテテ。判った!わかりましたよ!!俺達はやり遂げねばないって」
アランと全員が頭を抱えた。
聖夜の慈善は誰がいつ何の目的で創始したのか。統括者は誰で財源はどこから調達するのか。一切合切が隠蔽されている。
「ハーイキャティなんか拒めばよかった」
咲奈は最後に貰った縫ぐるみを思い出した。大切にすると母に誓い「やっぱり返す!だから起きて!」と棺に縋った。
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