エクストラ・ステージ

「そうだわ!思い出した!!」


ひとしきり涙目を腫らしたあとバッジョは落ち着きを取り戻した。女は感情の生き物である。脳梁が男性より太い分、常日頃から些末事に悩まされる。その鬱屈を定期的に排泄せねば神経が持たない。

ブロークン・セレブリティには感情パラメータという項目がある。複雑で一筋縄ではいかぬ値だが特定条件を満たすと様々なボーナスがつく。

結婚は人生の墓場というが死者の寝床は神聖な場所にもなる。バッジョは教会に詣でるイベントを介して夫ヘリオスを聖人に格上げした。そんな馬鹿なと思うがゲームは娯楽である。多少の理不尽や不可解は面白さに負ける。

「あたしは皆目わからない。面白いのよね? カッコ棒読み」

浮かぬ顔でバッジョは記憶を掘り続けた。攻略本を立ち読みした事がある。

ブロークン・セレブリティのバッドエンドには重要な達成条件が一つだけ隠されている。地球外生命体の召喚だ。掟破りな展開要素は冒険ファンタジーにつきものだ。バッドエンドを極めたプレイヤーキャラクターは予想外で波乱な人生が待っている。いわば敗者復活戦だ。

「わたし解く前に死んだから知らないけど続編につなぐ余韻らしいのよね」

バッジョはドレスの裾をからげると夫のもとへ急いだ。

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