ドラゴンゾンビ

「ヘリオス、すぐに来てくれ!」

決まり切った事務処理を終えて帰り支度をしていると上司に呼ばれた。

「定時を過ぎていますが…」

時間に煩い男は残業もしない。「今は有事だ。平時じゃない。どこの世界に五時から九時まで停戦する国がある!」

上司の尋常ならざる態度にリーマボルトはようやく状況を把握した。


トロール漁船が港の沖合で説明に困る獲物を釣り上げた。哨戒艦が急行し異常を千里眼に収めた。

「今、水晶玉に出す」

ドラゴンゾンビとも朽ちたスライムともつかぬ異様な物体がマストに吊るされている。その周囲をしかめっ面の水兵たちが右往左往している。

「これは一体…」

リーマボルトも言葉を失った。「何だと思うね。ちなみに魔導士やお宝鑑定士、神学者、高僧、王立アカデミー研究員から吟遊詩人に至るまで有識者を総動員して調べた」

上司は頭を抱える。「皆目見当がつかないなら私の出番もないでしょう」

ヘリオスはなおさら興味を失った。今はバッジョが恋しい。

「夫婦水入らずと行きたいが」

上司は申し訳なさそうに残業を命じた。釣り上げた獲物は朽ち果てた竜に見える。いやどう見てもゾンビだ。

「まさか…我々は」

「そのまさかだ。ゾンビの然るべき扱いは判るな?」

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