後悔先に立たず
「あの時、気づいていれば…」
バッジョはキリキリと歯噛みした。ブロークン・セレブリティは難易度かなり高めのゲームだ。序盤の思春期ステージに立ちはだかる最大の難関が”母親の問答”だ。若気の至りにステータスを振り過ぎると中二病を発症して口論イベントが発生する。もっとも偏りは職業選択の自由や出会いのチャンスにフリーハンドを与えてくれるのだが何事にも匙加減が大切だ。
勘当されたバッジョは途方に暮れているところを闇の奴隷商人に捕まった。しかし通りすがりの白馬王子が助けてくれた。彼が家まで送ってくれたがベラは頑として門を閉ざした。しかたなく彼はバッジョに遠い親類を紹介した。彼には身重の婚約者がおりベラの娘を引き取る余裕はない。代わりに決闘で息子を亡くしたステファン夫妻が養子に迎えてくれた。
二人は愛情をたっぷり注ぎ順風満帆な十代後半を過ごした。
「これもトラップだったのよ」
バッジョはペチペチと自分を平手打ちした。せっかくのボーナスステージを無為に過ごしてしまった。ここで発生する大して面白くもない小イベントの一つ一つに重要なフラグが隠されており後半生のフローチャートを決定する。
しかしバッジョは前世記憶を取り戻すことなく二十歳の成人式を迎えた。
そしてなんやかんやでお婿さんを探すステージに立たされた。
「それがよりによってリーマボルトよ!」
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