光の戦士より

「みなさん、敵どもは必死です。とんでもない攻撃をはじめました」

西暦2021年某月某日未明。

SNSのトレンドが騒々しい。こんな真夜中だというのに革命だの反撃だの全員逮捕だの戒厳令だの物騒な語句が並び各語に何万件ものリプライがついている。

一体全体どうしたというのか。火種の原因はピン女史の警告だ。


「え~私の兀フォンもおかしくなるのかなあ?」

真綾は眠い目をこすりながら設定画面を行きつ戻りつする。

ミーさま❤の動画によれば例のタイガートーチが行動を起こすという。

選挙結果を武力で転覆すべく軍最高司令官の立場を用いて臨戦態勢を敷いている。

民主主義が未熟な発展途上国でもあるまいに戒厳令は飛躍しすぎだろう。そういう批判もピン女史に一蹴された。

「いい加減に目を覚ましなさい。疑う人は悪に洗脳されているのです。まもなくタイガートーチ大統領から重大発言があります。しかし悪のハイテク企業が必死で攻撃しています」

スマートフォンの防災システムを改悪して機能を一時停止させようというのだ。そのためのアップデートが配信される。ピン女史は更新機能を手動で解除しろと呼びかけた。


常識的に考えて噴飯ものだ。アップデートはシステムの穴を塞ぐ応急処置だ。携帯会社が防災機能を停止する間に災害が起きればどうなるか火を見るよりも明らかだ。

だが真綾たちスマホユーザーにとっては些末事らしい。

初心者向けの解説動画が投稿され、アップデート機能は次々と停止されていった。

「さぁ、まもなく大統領の重大発表が始まります」

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