暗夜行路
自分が何を書くのかすら考えることが出来ればそれでいい。そのために私は努力するのだ。
美幸はしかし、深い海の上にいる。ふと立ち止まって足を滑らせたのだ。
本当に我が道を行く、で正しいのか。一抹の不安に座礁した。
決意が転覆し沈没することをを心底、恐れていた。
今の世に生きている人間の価値観。それを自分は決められない。
だが羅針盤を定めねば完結せず、流されるまま終わりの水平にたどり着く。
しかし、私は誰が描くか分からない小説を書く者。そんな自分が著す人類という存在を否定したくはない。
そんな美幸でもその闇の世界に一縷(いちる)の光が見えた時、水路が開けた。
美幸は「そうだった!」と叫んだ。
私は自身に生きている意味をぶつけてみる。
そして方針を見定め作家としての生き方を知る。
理解しなければ美幸自身を否定することになる。
まず「これだ!」と自分を褒める。
するともう一人の自分が「ああ、 よく気が付いたね」
と頭を撫でる。
「これで、少しは自分の人生は歩めるのかな?」
どうやら自分には生きる価値があるらしい。
そのことをもう一人の美幸は喜んでいた。
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