順風満帆


タベルナベントに風が吹く。

美幸はようやく自分の作品を向き合い他者すら肯定できるようになった、

「正しい」ことを決めるのは本人次第。

美幸は、自分の価値観と体感を一致させ進路修正を重ねた。その結果、その結果、作風が帆をはらみはじめた。

その結果、美幸の作品はどこまでも美しい海原となった。

美幸はモチベ狩りの被害者をカウンセリングしている。

「美幸に褒めてもらった! そして私の新しい価値観(ルール)は私自身で決まることになった!」

「うん! これからも貴方を導くね」

「はい! よろしくお願いします!」

美幸の気持ちは、それからだんだんと軽くなっていた。

二人の関係が変わった。

このままではいけないという同調者が増えた。

そしてそれが一つの筋道をつける。


「美幸、もうすぐ夏終わっちゃうよ」

「そうなんだ……じゃあ、一緒に海に行こうか」

「いいの?」

「うん……」

相談相手の美奈穂は海に行ったことがない。しかし、楽しみにしている。

「それで、なにする?」

「あ、それは私の……」

美奈穂も同じことを考えていた。

二人は波長が合う。

美奈穂の『美幸に褒めてもらった』という喜び、その思いと美幸が海を見てみたいという思い、こんなにもたくさん繋がるとは思ってもみなかった。

「えっと……お魚が欲しいかな」

「風浦港の釣り船はその場で料理してくれるんだよ」

美幸は生き生きとしていた。


晩夏の風浦沖。美幸はサマードレスを一気に脱ぎ捨てた。オフホワイトの生地に透けていた肩紐がくっきりした濃紺にかわる。


美奈穂はペールブルーのチューブトップにハイウェストのボトムでぼーっとうわの空。

「ねぇ何考えてるの」

「いや、ほら、美幸って以前『魚ってどこまで知ってるんだろう……』って哲学的なこと言ってたよね。それと自分のルールとかいろいろ」

「新作の構想をしてるの?貴女も好きねぇ」

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