悪役令嬢のステータス
私はメニュー画面を開き直した。自分のステータス画面に移動……と、その前に。
「もちお、私のステータス画面の参照権限を変更。ユラのみ非表示にして」
「かしこまりました」
指定すると、後ろでユラがちっと舌打ちした。
魔力ゼロの小夜子と違って、リリアーナはこの世界の住民だ。当然多彩なスキルを持っている。その中にはジェイドと一緒に開発中の極秘技術もあるはずだ。当然、ユラには非公開である。
「手品の種は明かさない主義なの。あんたはそこでせいぜい悔しがってなさい」
「あ~やだやだ、侯爵令嬢は小賢しくて」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるわよ」
権限をもう一度確認してから、私は自分のステータスを広げた。
レベルは五十八、ジョブは治療師として登録されている。
「リリィ、お前レベルが高すぎないか? クリスでも初期レベルは三十だぞ」
「確かに、場慣れしてるところはあったけど……」
レベルの高さを見て、ヴァンとケヴィンが首をかしげる。フランもわずかに眉間に皺を寄せた。
「今まで命を狙われてきた回数を考えれば、レベルは高くて当然だが……それでも、いきなり俺より上というのは不自然だな」
「小夜子の経験値が加算されたんじゃない? ジョブが村人だったから、うまく利用できなかったけど、ダンジョンを走り回った経験自体は無駄じゃないもの」
「なるほど」
「レベル上げを考えなくていいのは楽ね。パラメーターも悪くない値だし」
「精神的なパラメーターはサヨコと一緒だけど、フィジカル値の上昇がすごいね……」
数値を確認していたケヴィンが茫然とつぶやく。
「最強騎士と至高ダンサーの娘だもの。体力は高くて当然よ」
生まれ持った才能を腐らせないよう、毎日しっかりダンスレッスンしてるしね! これでみんなと一緒に走れるよ!
「でも、直接戦闘は期待しないでね。そっちの才能はほぼゼロだから」
「誰がやらせるかよ。だいたい、お前を前線送りにしたら、フランに殺されんじゃねーか」
それはそう。
ちらっとみたら、フランはにこりとこちらに笑いかけてきた。穏やかそうに見えるけど、目が全然笑ってない。
私に前衛は無理だね!
「あと細かいスキルは……と」
私はそこで口を閉じた。
レベルはともかく、この先の情報をユラに与えるわけにはいかない。
仲間に目配せすると、彼らもこくりと頷いてくれた。物分かりのいい仲間、頼もしい。
私のメインスキルは仲間の傷を癒す回復魔法だ。傷の深さに応じて、消費魔力を変えられる省エネ型。セシリアが蘇生魔法を使っていたのを見ていたおかげか、私にも同じスキルが標準装備されている。
予想通りというかなんというか、直接戦闘に使えるスキルはほぼゼロだ。その中で何故か投擲のレベルだけ妙に高い。これは多分、ことあるごとに
攻撃魔法は雷がメインだ。
出力がかなり高いけど、発動条件に『対象との接触』と書かれている。人間スタンガンに変身するには、相手に触れってことだ。前衛に加わらない私には、宝の持ち腐れなスキルだ。
「ねえ……これ何?」
とんとん、とケヴィンが攻撃魔法一覧のある一点を指先でつついた。
そこには『磁力魔法』『重力魔法』のふたつが並んでいる。どちらも、魔力を消費する割に効果が低い『死にスキル』というやつだ。でも、今うまく使えないのは、開発中だからだと思う。
私は唇の前で指をたてて、にっこりと笑った。
「内緒♪」
「……だね」
「いきなりパーティーを全滅させるようなスキルじゃないから、安心してて」
「本当だろうな?」
ヴァンが疑わし気に見てくるけど気にしない! 実際問題、この魔法を使ったところでちょっと鉄を引き寄せたり、物を持ち上げたりする程度だからね!
最後は、生産系スキルだ。
私以外にはセシリアくらいしか持っていない、珍しいスキルである。
リストには『製薬』『錬金術』『効果付与』のみっつが並んでいる。これはディッツの教育の成果だろう。細かく確認すると、ダンジョン探索に有用なアイテムを生産するスキルのほとんどがそろっている。
これがあれば、かなり攻略が楽になるはずだ。
私はセシリアの手をとる。
「セシリア、この先の回復は私にまかせて。あなたが小夜子を守ってくれたぶん、今度は私があなたを助けるわ」
「リリィ様……ありがとうございます!」
戦力が整ったことだし、この先はガンガン攻略するぞー!
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