ヘイト管理
「うひゃあああっ?!」
身をすくませる私の前にセシリアが割って入り、さらにユラがカエルの舌をはたき落とした。
「君の相手はこっちだよ!」
ユラが何か黒いモヤのようなものを体に纏う。それを見て、カエルは攻撃のターゲットを彼に変更した。自分が攻撃されやすいよう『挑発』スキル的なものを発動させたっぽい。
「び……びっくりした……!」
「さすがにボスはただの獣とは違う動きをしますね。でも、どうしていきなり小夜子さんを狙ったのでしょうか」
「たぶん、『一番体力の低い者を狙う』ってロジックで動いてるんだと思う」
ゲージ満タンでも、瀕死状態のユラより体力ないからね! 弱い者から狙うっていうのは、狩りのセオリーだけど、一瞬マジで死ぬかと思ったよ!!
とっさにかばってくれたセシリアと、不本意ながらユラにも感謝だ。
敵ごとに行動ロジックが違う。こんな簡単なルールを見落とすなんて、いくらブランクがあったからって、ゲームセンスが鈍り過ぎだ。
「ロジックが固定なら、彼女を囮にしたほうが狙いが定まっていいんじゃない?」
すさまじい勢いで舌攻撃を繰り出すカエルに応戦しながら、ユラがのんびりと言う。
「小夜子さんは攻撃を一度受けただけでも死ぬんです! そんな危ないことさせられません! それくらいなら……」
ゆら……とセシリアがユラそっくりの黒いモヤを纏った。
今の一瞬でユラの挑発スキルをコピーしたらしい。
「私が受けてたちます」
「ええええっ、ちょっと待ってよ!」
ターゲットがいきなり切り替わって、ユラがあわてる。
「君を傷つけさせるわけには!」
「そう思うのなら、麻痺でも毒でも適当なデバフを打ち込んでください。どうせ攻撃していれば、いつかはこちらが敵視されますから」
「あああもう!」
ユラが手を振ると、カエルの動きが鈍った。
セシリアの命令通り何かデバフ魔法を使ったらしい。セシリアはマチェットを構えてカエルに肉薄する。鮮やかに、舞うようにマチェットを振るとカエルは動きを止め……次の瞬間には光になった。
単純に切り裂いたんじゃなくて、即死系の魔法を一緒に使ったっぽい。
バトルを繰り返したのは数時間だけのはずなのに、成長速度がやばい。
彼女は私を振り返ってにっこり笑った。手にしているのはマチェットなのに、それでもかわいい美少女やばい。
「どうです、経験値は上昇しましたか?」
「ボスボーナス含めて、これでちょうどレベル二十! いいペースだよ」
「あとは機能解放ですけど……」
「そっちは、奥のドアを開いて第二階層に行かないとアンロックされないみたい。今のでポイントボーナスも入ったから、階層移動したらすぐにヴァンたちを呼ぼう」
「それはいいけど……いきなり怖いことしないでくれる?」
はしゃぐ私たちの間に、ユラの不満そうな声が割って入った。
「何が?」
「自分をターゲットにさせるとか、心臓が止まるかと思ったよ」
「何を今更。そもそもあなたは私を殺したいんじゃないんですか?」
セシリアが問い返すと、ユラは大仰に肩を落とす。
「僕が君を殺そうとしたことなんて、一度もないよ。だいたい僕は聖女と勇士の家系を直接殺せないんだし」
「へ?」
なんだその制限。
初耳だぞ?
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