はじめてのボス戦

 セシリアの戦闘訓練をしながらダンジョンを回り、ポイントやアイテムを集めて第一階層のボスのところにたどりついたのは、それからさらに一時間後のことだった。

 今まで一定の幅で続いていた洞窟が不自然に広がり、その先に大きなステージのような広場を作っている。ボス用戦闘フィールドというやつだ。

 生態系も何もかも無視した巨大なカエルが、水場もないのに広場中央に居座っている。

 カエルの背後を覗き見てみたら、その先に取ってつけたような大きな扉が見えた。


「洞窟の中の建造物なのに、錆びひとつないピカピカの扉……不自然すぎる光景だね。本来は罠と判断すべきだけど」

「きっとあれが、次の階層への入り口なんでしょう」

「あいつを倒して、第二階層にいけば『パーティーメンバー追加』の機能が解放されるはずだよ」

「やっとユラとの三人旅から解放されるんですね……」

「僕としては、ずっと君との二人の時間を堪能したかったんだけど」

「だからしれっと私の存在を無視すんな」


 隙あらば喧嘩を売るユラの言動にはだいぶ慣れたけど、ツッコミだけは止められない。


「レベル上げのためにわざと迷宮をぐるぐる回ったから、ポイントは十分。やりくりしたら、三人ともいっぺんに呼べると思う」

「ヴァン様たち全員ですか? よかった……!」

「ええー? そんなに増えるの?」


 セシリアがぱっと顔を輝かせて、ユラが顔を曇らせた。

 へへーん、銀髪トリオが復活したら、ハブられるのはユラのほうだからなー?


「あのカエルが簡単に倒れないよう、肉体再生の呪いでもかけようかな」

「やめなさい」


 セシリアがぴしゃりと言うと、ユラの動きが不自然に止まった。どうやら『服従の首輪』が作動したらしい。迷宮の外のように血こそ吹き出さないものの、ユラを服従させる機能はしっかり働いているようだ。


「しょうがないなあ」


 ユラは肩をすくめると、そのへんに落ちている小石のひとつを拾い上げた。その間に私は素早くメニューを操作する。ボス戦は通常戦闘と違って、経験値が多かったりするからいろいろ設定しないと。


「じゃあ、早速いくよ?」


 私が操作し終わったのを見届けてから、ユラはカエルに石をぶつけた。

 そのとたん、待機状態だったカエルの視線がこちらに向く。戦闘が始まったのだ。

 病弱少女が戦闘中にできることはほとんどない。せいぜい邪魔にならないよう、隅に避難しているくらいだ。攻撃のほとんどはユラが受け止めるから、あとは彼に頑張ってもらおう。


「グェエエエエ!」


 カエルは不気味な鳴き声を響かせたあと、なぜか『私』に向かって勢いよく舌を伸ばしてきた!



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次の更新は1/24です!


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